8日、安倍晋三元首相が奈良市での参院選応援演説中に元海上自衛官に銃撃され、亡くなった。銃撃事件は全世界で大きく報道されたが、思わぬ動きにつながった。このニュースが伝わるや否や、下落が続いていた円相場が一転して円高に。なぜ、元首相の銃撃事件が円高につながったのか?
8日午前11時43分にネットニュースで「【速報】安倍元総理が銃撃され心肺停止 発砲は背後から散弾銃2発『左胸や首に命中』ドクターヘリで病院へ搬送」の記事が公開されると、為替相場は一転して円高に。わずか17分後の正午には、前日午後5時時点よりも57銭円高ドル安の1ドル=135円54~56銭に振れた。
安倍元首相は今回の参院選の応援演説で各地を回り「金利を上げると悪夢のような時代に戻ってしまう」と繰り返し主張するなど、政策金利の引き上げに猛反発していた。これは安倍元首相が掲げた「アベノミクス」で大胆な金融緩和を打ち出していたため。安倍元首相は最近の物価高や円安を受けて、自民党内でも利上げ論が出ていることに不快感と警戒感をあらわにしていた。
安倍元首相は次期日本銀行総裁人事についても言及するなど、「アベノミクス」の否定につながりかねない利上げを強く牽制(けんせい)してきた経緯もある。岸田文雄首相も軽視できない自民党最大派閥を率いる安倍元首相の意向は、利上げのネックとされてきた。
安倍元首相の影響力がなくなれば政府と日銀は利上げに舵(かじ)を切るとの見方も根強く、今回の円高の誘因になったようだ。党幹部の襲撃事件は「同情票」を呼び込むため、直後の選挙で有利に働くとされる。自民党が参院選で勝利すれば、岸田政権の政治基盤は安定して経済が上向くとの観測も、円高につながるものだ。
ただ、コロナ禍からの経済回復が遅れている日本だけに、欧米ほどの大幅な利上げは難しいだろう。事件を受けての円高も一時的で、仮に日銀が利上げを断行しても再び円安局面に入る可能性もある。
文:M&A Online編集部
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