「私的整理円滑化法」法整備へ 内閣官房

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内閣官房

「新たな事業再構築のための法制度の方向性」を公表

私的整理円滑化法案策定へパブコメ募集

内閣官房の新しい資本主義実現本部事務局は、事業、資産を譲渡・譲受する際などの私的整理(債務整理)を迅速化する「新たな事業再構築のための法制度の方向性(案)」を公表した。全債権者の同意がなければ債務減免などができない現行の手続きを多数決決議に変更する私的整理円滑化法案の策定を見据えたもので、11月26日まで意見を募集している。

政府の新たな総合経済対策でも重点事項に

事業再構築の在り方をめぐっては、2022年6月に閣議決定された「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画」でも、債権者の多数決決議と裁判所の認可により私的整理ができるようにする私的整理円滑化法案を早期に国会に提出するとした。同法案の策定は、政府が10月28日に取りまとめた新たな総合経済対策にも重点事項として打ち出されている。

新法の適用は、事業の継続に支障を来すことなく債務を弁済するのが困難となる恐れがある場合を想定。新法に基づく制度の手続きにより権利変更の対象となり得る対象債権は、事業再構築のために弁済が必要なものすべてとし、対象から除外する債権は法令などで具体的な基準を示すことを想定している。

対象債権者集会での多数決決議で可決

具体的な手続きに関し、新法制度の手続きの開始を申し立てる事業者は事業再構築の方向性などを記載した再構築概要書や債権リスト、対象債権の選定理由書などを主務大臣が指定する法人に提出。指定法人は対象債権の選定の合理性などが満たされているかに加え、手続き開始に主要債権者の異議がないかといった点を確認する。

また、指定法人は再構築概要書と対象債権を確認後、対象債権者集会を招集・主宰し、手続きや決議の適法性・公正性を監督。再構築計画案の法令適合性などを調査し、決議前に債権者に提供する報告書を作成する。対象債権者集会では事業省による情報提供と債権者の意見陳述の機会を与え、再構築計画案を対象債権者の多数決で可決できることとする。

全員の同意がなければ裁判所が判断

対象債権者全員が同意した場合は、裁判所の認可なしで効力が生じる。一方、そうでない場合は事業者が裁判所に計画認可を申し立て、裁判所は指定法人と債権者の意見陳述を聴取して決議の瑕疵や清算価値保障について判断するが、裁判所の認可に対しては対象債権者の即時抗告による異議申し立てを可能とする。

私的整理の法制度見直しは長年の課題

私的整理の多数決決議は欧米などでは浸透しており、日本でも2014年3月に初会合を開いた公益社団法人商事法務研究会主催の「事業再生に関する紛争解決手続の更なる円滑化に関する検討会」で論議が重ねられた経緯がある。

検討会は経済産業省、金融庁、法務省がオブザーバーで参加。同年6月に閣議決定された「日本再興戦略」改訂2014には「私的整理を含め、少数債権者の不合理な反対によって事業再生を妨げられないようにするために関連諸制度の在り方を検討するなど、企業再生に関する法制度や実務運用の在り方を見直す」との文言が盛り込まれた。

再生か延命か、諸刃の剣となる難しさも

金融機関に債務免除を求めても、一部の金融機関の同意を得られず再生の道を閉ざされた企業は少なくない。半面、抜本的な財務体質が改善されないまま条件を緩めても延命にしかならないとの指摘も根強い。コロナ禍や物価高騰の影響で債務超過に苦しむ中小企業は多いが、多数決決議で反対した対象債権者にも配慮する適切な仕組みづくりが求められる。

文:M&A Online編集部

関連リンク:
内閣府「新たな事業再構築のための法制度の方向性(案)」
「新たな事業再構築のための法制度の方向性(案)」に関する意見募集について

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