合成樹脂、無機材料、機能性セラミックス、医薬品などを手がけるデンカ<4061>は、5月から新型コロナウイルス感染症の治療薬として期待される「アビガン」の原料となるマロン酸ジエチルの生産に乗り出す。 

日本政府から国内での一貫した供給体制を作るため国産の原料を使用したいとの要請を受け、青海工場(新潟県糸魚川市)にマロン酸ジエチルの生産体制を構築することにした。 

デンカは「新型コロナウイルス感染症への対策を社会的責務と捉え確実な供給を図っていく」としている。 

デンカはアビガン原料の国内唯一のメーカー

マロン酸ジエチルは、合成香料、農薬、医薬品などの原料として使用される有機化合物。デンカは国内唯一のマロン酸ジエチルメーカーで、マロン酸ジエチルの原料となるモノクロル酢酸も国内で唯一、デンカの関連会社が生産しているという。 

デンカは2017 年5 月にマロン酸ジエチルの生産を中止したが、生産設備は保有していたため、他製品の生産ラインからの人員配置転換などにより設備を再稼働する。 

アビガンは富士フイルム富山化学(東京都中央区)が開発したインフルエンザ感染症治療薬で、他のインフルエンザウイルス感染症治療薬が効かない新型インフルエンザウイルスに備えて国が200万人分を備蓄している。国が使用を判断した場合にのみ患者への投与が可能になるため、現在は市場には流通していない。 

富士フイルム富山化学は3月末に国内で新型コロナウイルス感染症治療薬としての臨床試験を始め、日本政府も前向きにアビガンの国内薬事承認を進めているため、早い時期に全国の医療機関で利用できるようになる可能性がある。 

すでに中国は2020年3月17日にアビガンに新型コロナウイルスへの治療効果が認められ、副作用はみられなかったと発表しており、ドイツもアビガンの治療効果を認め大量に調達する計画を明らかにしている。

インフルエンザ感染症治療薬のタミフルやリレンザは、細胞内で増えたインフルエンザウイルスが細胞の外に出ていくことを防ぐもので、アビガンはインフルエンザウイルスが増える際に必要となるRNA(リボ核酸)合成酵素を阻害することでウイルスの増殖そのものを抑える。 

新型コロナウイルスはインフルエンザウイルスと同じRNAウイルスであるため、治療効果が期待されている。

文:M&A Online編集部