新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大で、街中のドラッグストアからマスクが消えて久しい。マスクの供給は相変わらず不十分で、医療機関ですらマスク不足に悩まされる事態に陥っている。

N95マスク、ついに「使いまわし」

2020年4月10日、ついに厚生労働省は米労働安全衛生研究所の規格を満たした「N95」マスクについて、「例外的取扱い」として「滅菌器活用等による再利用に努めること」や「必要な場合は、有効期限に関わらず利用すること」などを医療機関に呼びかけるよう自治体に連絡した

かつてはマスクはもちろん注射針などの医療器具は殺菌または滅菌して再利用するのが当たり前だったが、院内感染の多発などから近年は使い捨てが当たり前になっている。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のような極めて感染力の強いウイルスに最前線で立ち向かう医師や看護師がマスクを使い回すというのはリスクも高く、極めて異例だ。それほど医療用高品位規格のN95マスクが不足している。

政府もこうした深刻な危機に対処するため、マスク製造の新規参入を呼びかけている。その要請に応えた代表的な企業がシャープ。液晶テレビで一世を風靡(ふうび)した精密家電メーカーだ。

同社は高品位の液晶生産に欠かせない巨大なクリーンルームを持ち、そこでマスクを量産する。雑菌やウイルスの付着を絶対に避けなくてはいけないマスク生産には、うってつけの環境なのだ。

クリーンルームで生産されるシャープ製のマスク(同社ホームページより)

しかし、同社が生産しているのは一般向けの不織布マスク。医療現場でも利用するのは確かだが、感染者に対する気管内吸引や気管内挿管、下気道検体採取などウイルス飛沫が発生する可能性が高い処置をする際に必須のN95マスクを量産している様子はない。

なぜ、シャープは衛生管理面では完璧に近い生産環境がありながら、医療現場が最も必要とするN95マスクを生産しないのか。