ノーベル化学賞を受賞した田中耕一氏が勤務する島津製作所<7701>が4月20日に、PCR検査時間を従来の半分の約1時間に短縮でき、偽陰性が生じる可能性を低減した「新型コロナウイルス検出試薬キット」を発売した。 

同キットは陽性10検体、陰性15検体を用いた評価で 、陽性、陰性ともに一致率は100%だった。研究用試薬のため医薬品医療機器法に基づく体外診断用医薬品としての承認・認証などを受けていないが、保険適用の対象となるという。 

ということは同キットによって、これまでは検査件数を制限していたために不満の多かったPCR検査が受けやすくなることが予想される。新設されるPCRセンターなどで活用すれば検査能力が高まることも考えられる。島津製作所が開発した新型コロナウイルス検出試薬キットとは一体どのようなものなのか。 

PCR阻害物質を抑制し検査時間を短縮 

PCRはDNA(デオキシリボ核酸=遺伝子)ポリメラーゼと呼ばれる酵素の働きと、温度調整を利用してDNAを増殖させる技術。 

新型コロナウイルスはRNA(リボ核酸=DNAを鋳型として合成される)ウイルスのため、RNAをDNAに変換しPCRでDNAを増やしたうえで、陰性、陽性の判定を行う。 

現在のPCRは鼻などから採取した検体からRNAを抽出して精製する煩雑な作業が必要なため、検査に人手がかかるほか検査結果がでるまでに2時間以上かかる。 

同キットは「Ampdirect」と呼ばれる物質が、検体に含まれているたんぱく質や多糖類などのPCR阻害物質と結合し、これら阻害物資がDNAやRNAなどに吸着するのを抑えることができるため、RNAの抽出や精製する作業を省くことができる。 

このため検査に要する人手を大幅に削減でき、PCR検査の全工程を従来の半分である約1時間に短縮できるほか、手作業を行わないため、人為的なミスも防止できる。 

島津製作所の新型コロナウイルス検出試薬キットの仕組み(同社ニュースリリースより)

また、誤操作などにより、陽性にもかかわらず遺伝子増幅が起きなかった場合に誤って陰性と判断しないよう、同キットの反応液には、増幅工程が正しく進んだことを確認するための参照成分を添加しており、これによって偽陰性が生じる可能性を低減している。 

同キットはPCRで新型コロナウイルスを検出する試薬のため、同キットを使用するには、PCR装置や分注ピペット、恒温槽、小型遠心機などの機材や、機材の取り扱い技術が必要なためドラッグストアなどの小売店や個人への販売は予定していないという。 

島津製作所は、これまでにAmpdirect技術を用いて、腸管出血性大腸菌やサルモネラ属菌、赤痢菌、ノロウイルスなどの病原体検出試薬を開発しており、これら技術を応用して今回の新型コロナウイルス検出試薬を開発した。

文:M&A Online編集部