新型コロナウイルス感染症の治療薬として効果が期待されているアビガンを巡って動きが慌ただしくなってきた。

安倍晋三首相は緊急事態宣言を行った4月7日の会見で、アビガンについて120例を超える投与が行われ、症状改善に効果があったとしたうえで、本人の希望や病院の倫理委員会の了承があればアビガンを使えるようにし、その際には治験でなく観察研究という形で使ってほしいと語った。

すでにアビガンを製造している富士フイルム富山化学(東京都中央区)は3月31日に、アビガンの国内臨床第Ⅲ相試験に入ったことを公表。安全性や効果が確認できれば早ければ7月以降にも治療薬として使用できる可能性が出てきた。

新型コロナウイルスは特別に致死率が高いウイルスではなく、感染しても短期間で回復できる治療薬があれば、さほど恐れる必要はない。

観察研究としての使用から始まり、治療薬としてもめどが見えはじめてきたアビガンが、いよいよ本格的に使えるようになるわけで、緊急事態宣言中の一つの朗報といえるだろう。

当面はアビガン頼みに

アビガンはタミフルなどの既存のインフルエンザ治療薬では効果がない新型インフルエンザウイルスに備えて国が200万人分を備蓄している薬剤で、国が使用を判断した場合にのみ患者への投与が可能になる。

アビガンを新型コロナウイルス感染症治療薬として使用する場合はインフルエンザ治療よりも投与する量が増えるため、200万人分の備蓄量は70万人分になるという。このため安倍首相は7日の会見で新型コロナウイルス対策用にアビガンの備蓄を200万人分に拡大することも公表した。

アビガンの増産については富士フイルム富山化学がすでに着手しているほか、合成樹脂や医薬品などを手がけるデンカ<4061>が4月2日に、アビガンの原料となるマロン酸ジエチルの生産を5月から始めると発表した。

一方、アビガンの治療効果については、中国が3月17日に効果が認められ、副作用はみられなかったと発表しており、ドイツもアビガンの治療効果を認め大量に調達する計画を明らかにしている。

また日本政府は、希望する国に無償でアビガンを提供する方針。インドネシアやイランなど20カ国への無償提供が決まっているという。

新型コロナウイルス感染を予防するワクチンの開発には1年ほどの期間が必要と見られており、予防薬と治療薬が揃えば鬼に金棒だが、この体制の実現はまだまだ先になる。当面は感染しても短期間で治癒することを目指したアビガン頼みとなりそうだ。

文:M&A Online編集部