一般社団法人日本フードサービス協会が発表した、2018年10月の外食市場動向によると、10月の国内の外食全体の売上高は前年比101.7%でした。26ヶ月連続して前年を上回ったことになります。外食産業は少子化の煽りを受け、10年単位でみると緩やかな縮小傾向が続いています。しかしながら、1年単位のミクロな視点でみると、盛り上がっている業界といえます。背景にあるのは、法人交際費が増加していることと、訪日外国人の旺盛な外食需要です。

こうした背景を受けて国内外食企業のM&Aは、年を重ねるごとに活発化。2015年は13件、2016年が20件、2017年・2018年は24件(適時開示ベース)となっています。熾烈な競争の中で、大手企業が寡占化する姿が浮かび上がってきます。

買収には大きく2パターンあります。

  • ①業態を横に広げるポートフォリオ強固型
  • ②同業態を取り込む深掘り型
イクスピアリ
クリスマスイベントで盛り上がるイクスピアリ


イクスピアリのレストラン事業を買収したクリエイト・レストランツ・ホールディングス

クリエイト・レストランツ・ホールディングス<3387>(以下:CRH)は、1月にオリエンタルランド全額出資子会社のイクスピアリから、飲食事業を買収しました。イクスピアリ内で展開していた全直営店をCRHが買い取った形。この案件は典型的なポートフォリオ強固型です。

同社は2013年に居酒屋「磯丸水産」「鳥良商店」などを展開するSFPホールディングスを買収しているほか、2014年にラーメンの「つけめんTETSU」、2015年6月にしゃぶしゃぶの「かごの屋」、2018年1月にシンガポールチキンライス店「海南鶏飯食堂」などを次々と買収しています。

業態は多種多様で、都市型のビルイン、郊外型ロードサイド店、フードコートなど、出店形態・エリアも様々。グループ連邦経営という横展開型の経営方針を打ち出しています。イクスピアリの買収により、観光地の外食需要取り込みという新たな集客軸ができました。

ポートフォリオ強固型で多角的な展開ができる一方で、経営者同士の軋轢が生じることも事実。それが如実に表れたのが、カフェ業態などを展開するバルニバービ<3418>が買収したR.Tパートナーズの一件。バルニバービは2017年7月にR.Tパートナーズを買収しましたが、2018年4月にR.Tの代表・路次徹夫氏がおよそ3億円で全株を買い戻しています。

R.Tパートナーズは、都内で串揚げや鉄板焼きなどの高級業態を展開しています。バルニバービは業態開発力や店舗マネジメントノウハウを吸収しようとしました。しかし、経営方針の違いなどを理由として仲違いする結果に。元来センスや職人的な技術が重要とされる外食企業は、オーナーや経営者が一癖二癖ある人が多い傾向があります。業態の多角化が、必ずしも買収によって上手くいくとは限らないことを示した案件となりました。

きよっぱち
リニューアルをしかけた「きよっぱち」


テンポスホールディングスは「きよっぱち」の再建に失敗か

「築地銀だこ」のホットランド<3196>は、10月にお好み焼き飲食店「ごっつい」を運営するアイテムを5億円で買収しました。ごっついは、俳優の伊原剛志氏が経営するお好み焼き店。直営で6店舗を展開しています。粉と鉄板で相乗効果の高い業態を買収しました。

ホットランドは、2014年にアイスクリームの「コールド・ストーン・クリーマリージャパン」を買収。カフェの「ザ・コーヒービーン&ティーリーフ」を展開するなど、業態を横に広げています。近年では、上野に「銀だこ大衆酒場」をオープン。会社員の取り込みを本格化するなど、業態ではなくターゲットを変えて新たな層の取り込みにも注力しています。

テンポスバスターズ<2751>は、房総半島のみやげものとレストランを経営する「きよっぱち総本店」を経営陣に売却しました。テンポスはステーキ「あさくま」やラーメン「日の出らーめん」など、経営が悪化した企業の建て直しを行ってきました。

きよっぱちは浜焼きを主軸として、ツアーバスで集客をしていました。しかし約5000万円の赤字を黒字転換することができずに再建を断念。持株のすべてを売却しました。人手不足などを背景として経営資源の選択と集中が叫ばれる中、業態の横展開の難しさを示しています。

CRHのように、経営戦略としてのポートフォリオ強化を前面に打ち出し、青写真の通りにM&Aを行う企業が強味を発揮しているようです。