KDDI<9433>が30億円の出資を決めたレシピ動画「デリッシュキッチン」の株式会社エブリー。2015年の設立から資金調達を重ね、2016年にグロービスなどから6.6億円、2017年3月に27億円、2017年12月にWiLや伊藤忠商事などから20億6000万円を調達していました。

KDDIからの出資により調達額が84億3000万円という凄まじい数字になっているデリッシュキッチン。その一方で業績はまだまだです。5月25日に発表した決算では、純損失が23億1500万円。スタートアップ企業らしい加速度で、アプリのダウンロード数はリリースからわずか1年で900万ダウンロードを記録。しかし、マネタイズはまだまだ。そろそろ広告収入のビジネスモデルにも限界がきたようです。

KDDIの子会社になる未来は約束されましたが、ユーザー課金という難しい壁に挑戦しなければ、会社としての次の成長ステージは見えてこないかもしれませんね、という話です。

デリッシュキッチン
1月にアプリをリニューアルした


競合「dely」も70億円調達、加熱するレシピ動画ビジネス

レシピ動画は第2のクックパッドを狙っています。2014年4月にdely株式会社の「kurashiru」がスタートし、2015年9月に株式会社エブリーの「デリッシュキッチン」が始まりました。現在はこの2強が激しく争っている構図です。この分野は米Tastemadeが本国アメリカで先行スタートし、2社がそれに追随しました。Tastemadeは日本版もリリースしているものの、今は本国の方に力を入れている模様です。驚くべきは各社の資金調達額。delyは総額70億円、エブリーが84億円。Tastemadeは8000万ドル(約88億円)にも上っています。料理分野の動画コンテンツにかかる期待値の高さを物語っています。

ここで、スタートアップとベンチャー企業の違いについて簡単に説明します。スタートアップは、世の中にないものを生み出して短期間のうちに社会に広め、広汎な支持を得ることを目指す組織。初期段階では開発費や人件費が不足しているため、ベンチャーキャピタルや個人投資家などから資金を集めることが主要な活動の一つです(ほとんどの場合、黒字化できていないので銀行からの借り入れはできません)。一方、ベンチャー企業は日本独特の考え方で、生まれて間もない企業のことを指します。

様々な解釈がありますが、多くの場合はストック型ビジネスを構築して銀行などから借り入れを行い、長く活動する組織を指しています。スタートアップは一攫千金を狙っているので、エグジットを強く意識しますが、ベンチャーは自前で稼いで末永く組織を存続させようと考えるケースが多いです。

数十億円の資金調達を行っているエブリーやdelyはまさにスタートアップ。エブリーはKDDIに買収されることがほぼ確実となりました。今年3月にKDDIを引き受け先とする第三者割当増資により、30億円の出資を受けると発表したのです。これでKDDIの持分法適用関連会社となりました。一方、delyは高い確率でIPOをすると考えられます。なぜなら出資会社を見ると、ジャフコ<8595>、ソフトバンク、YJキャピタル(Yahoo!系列)などが並んでいるからです。いかにも大型上場を狙いそうなメンツが揃っています。

「Kurashiru」はリリースから2年で1000万ダウンロードを突破、「デリッシュキッチン」は1年で900万ダウンロードを超えました。ちなみに、国内で良く知られているFacebookやTwitterでも2000万と言われています。わずか1~2年ほどで1000万を達成することがいかに困難かがわかります。スタートアップと呼ぶにふさわしい機敏な動きには唸るばかりです。