ペペロンチーノが一皿299円という異例の安さでファンを広げるサイゼリヤ<7581>。その手軽さから、ターゲットはファミリー層だけに留まらず、学生を中心とした若者の取り込みにも成功しました。さらにグラスワインを1杯100円という驚異的な価格で提供し、居酒屋がターゲットにしていた会社員にまでファンを広げています。しかしながら、ここにきて暗雲が立ち込めてきました。

2018年8月期の営業利益は前期比23%減の86億4000万円となったのです。2019年8月期の営業利益は9.9%増の95億円にとどまる見込み。2017年8月期の営業利益112億1600万円には遠く及ばない様子。人件費や原材料費が高騰する昨今、安売りだけで勝負をかけるビジネスモデルに限界がきているのかもしれません。

画像はイメージ


低価格の鬼門「原価率」が1.1%悪化

まずは直近の業績から。

売上高営業利益
2019年8月期(予想)
1598億円(3.7%増)
95億円(9.9%増)
2018年8月期1540億6300万円(3.9%増)
86億4000万円(23%減)
2017年8月期1483億600万円(2.3%増)112億1600万円(24.5%増)

決算短信より

毎期増収を続けてはいるものの、営業利益は前期から伸び悩んでいます。これは、輸入食材の価格が高騰が大きく影響しています。原価率の推移を見てみましょう。

原価原価率
2018年8月期562億6800万円36.5%
2017年8月期525億2800万円35.4%
2016年8月期533億9800万円36.8%
2015年8月期520億5800万円37.3%

決算短信より

2018年8月期は前年同期比で1.1%悪化し、36.5%となりました。低価格重視のレストランにとって、原価率の上昇は頭の痛い問題。2018年は台風、地震などの自然災害が比較的多く、国内の原材料費高にも見舞われました。

原価の上昇を価格転嫁できれば良いのですが、「安売り」を最大の武器にしているサイゼリヤは客離れを引き起こす可能性が高いです。同じく低価格をセールスポイントとしていた鳥貴族が、280円から298円に値上げした途端、客数が昨対割れを起こしたことは業界では有名(くわしくはこちら)。

その他、吉野家<9861>も、2019年2月期第1四半期の営業利益が1億7800万円の赤字。同社も値上げをして客離れを引き起こした過去を持ち、値上げに踏み切れていません。

低価格を武器とした外食企業に、逆風が吹いています。そして今、第2の嵐が業界を揺さぶっています。人件費の上昇です。下の表はサイゼリヤの販管費率です。同社は商品を安く提供するため、宣伝広告費をかけない戦略をとっています。そのため、販管費に含まれる大部分は人件費と考えられます。

販管費販管費率
2018年8月期891億5400万円57.8%
2017年8月期845億6100万円57.0%
2016年8月期825億5700万円56.9%
2015年8月期797億700万円57.2%

同社は理系出身者を多く採用していることで有名。創業者の正垣泰彦氏は東京理科大の物理学科出身です。エンジニアリング部という部署を設け、業務改善や生産性向上に取り組んでいます。掃除機を使うよりも、モップの方が効率的と判断し、掃除機を撤廃したこともありました。

そうした企業努力により、2016年8月期から2017年8月期にかけて、販管費率は0.1ポイントの上昇に留めました。驚くべきは、その1年間で29店舗も新規出店しているのです。なお、2015年8月期から2016年8月期にかけても2店舗を新規で出店していますが、販管費率は上がるどころか下がっています。これこそがサイゼリヤの真骨頂、生産性を追求する現代型のレストランでした。

しかし、28店舗出店した2018年8月期に販管費率は0.8ポイント上がってしまったのです。これまでのような高い生産性を維持できなくなったと考えられます。