居酒屋「塚田農場」などを運営するエー・ピーカンパニー(以下:APカンパニー)<3175>の業績・株価がダダ下がりの様子。2018年3月期の売上高は前期比0.9%減の257億2300万円。さらに2019年3月期は2.8%減の250億円と予測しています。直接的な原因は新規出店ができないため。背景には、人材不足で塚田農場の“ウリ”だったサービス力が失われ、新規・リピーター客ともに集客できなくなったことがあります。年間の既存店月次売上高は連続の昨対割れ。新規出店している場合ではなくなり、負のスパイラルに陥っているというわけです。

そんな折、「メニューに記載された地鶏を使っていないのに、まるで使っているかのように表現して、消費者に誤解を招いた」。という、景品表示法に基づく措置命令を受けました。泣きっ面に蜂。株価は業績発表前の809円から700円台に下落し、さらに“措置命令ブースト”がかかって600円台にまで沈みました。同社復活のカギはどこにあるか、という話です。この記事では以下の情報が得られます。

  • ①APカンパニーが失速したわけ
  • ②塚田農場の立て直し内容と成長に向けた次のステップ

     

和食つかだ
中目黒エリアで勝負をかける

新規出店重視で効率化を推し進めた結果、「塚田農場」が陳腐化

まずはAPカンパニーの業績から。

※( )は前期比

売上高営業利益
2017年3月期259億6600万円(18.9%増)3億1300万円(47.6%減)
2018年3月期257億2300万円(0.9%減)3億3000万円(5.3%増)
2019年3月期予測250億円(2.8%減)3億5000万円(6%増)

APカンパニーの不協和音は2016年に始まりました。それが2017年3月期の業績に色濃く表れています。売上高は前期比18.9%と好調ですが、営業利益は47.6%減。出店戦略によって売上高は伸ばせているものの、営業利益が大幅に落ち込んでいるのです。同社は出店の加速で人材不足に陥り、サービス力を失って顧客離れを招きました。では、主力業態「塚田農場」のサービス力とは何か? 2つあります。

  • ①キャバクラ・スナック寄りの接客
  • ②食材の生産から販売までの一貫提供

      

塚田農場はこの両輪で顧客獲得に成功しました。まずは①について。塚田農場は元気の良いアルバイト店員が有名です。女性は短めの浴衣を着ていたりして、ターゲットの男性会社員を虜にしました。2007年ごろに飲食業界を揺るがした「居酒屋はなこ」をさらにマイルドにした感じ。キャバクラよりも敷居を低くし、低価格で顧客の”スケベ心”を満たした「はなこ」(運営していたセクションエイトの詳細はこちら)。塚田農場はそんな”スケベ心”を、極めて健全な形で体現しました。それがジャブと呼ばれる接客手法に出ています。ジャブは再来店を促す仕掛けのことです。

【ジャブの一例】

  • ・新規客に名刺を配り、再来店するごとに肩書が上がる
  • ・ビールの泡にカシスでハートを描く「ラブ注入」
  • ・「わたしのこと、忘れないでね」と塚田農場シールを渡され、「ケータイに貼ってください!」とお願いされる
  • ・ガーリックライスをハート型に成形して提供

      

露骨な色っぽさを出さなかったところがポイント。エンタメの範囲内で収まったので、女性客からも好評を得ました。ここで重要なのが、アルバイトを束ねる店長の存在。ジャブは会社が仕組みを作って提供していたわけではありません。店舗ごとに自由にやらせて、競わせていたのです。そのため、店長がシフトからジャブ出しのモチベーション管理まで、すべて行っていたことになります。店舗数を急速に増やすとどうなるか、その未来は予測できます。

②は株主や業界関係者にはよく知られたモデル。APカンパニーは生産から販売までの、いわゆる6次産業化に成功した数少ない企業の一つ。食材を自社の養鶏場と契約農家から直接仕入れたため、中間業者の手数料をなくし、食材原価を安くすることに成功しました。地鶏店の客単価が6,000円前後だったときに、4,000円を切る金額で提供したことは業界でも有名です。生産者にとっては、APカンパニーと提携することで、安定した価格で買い取ってくれ、長期で契約するメリットがあります。消費者には安心・安全の価値を提供することができました。同社は社会的な役割も非常に大きい企業なのです。