公開日付:2017.10.31

 10月2日、都内を中心にステーキ&カフェ「KENNEDY(ケネディ)」などを展開していた(株)ステークス(TSR企業コード:295376414、品川区、中路優理社長)が東京地裁に破産を申請、同日、破産開始決定を受けた。関連会社1社を含む負債総額は14億3700万円だった。
 「カフェ感覚で気軽にステーキ」をモットーに、カジュアルなステーキ店として一時は人気を博した。だが、同業との競合で顧客を奪われ、安易に値引き頼りの戦略が自らの首を絞めた。夏場から取引先への支払遅延が相次ぎ、信用不安が広がりを見せるなかで経営は限界に達した。

 ステークスは1998年1月に現社長の父、兄らが中心となってステーキレストランを開業した。いわば家族経営の「街のレストラン」だった。アメリカンスタイルで気軽にステーキを楽しめるケネディはすぐに顧客の心を掴んだ。矢継ぎ早に2号店、3号店を出店し、2005年に現社長が就任して以降はそのペースを加速させ、業容を拡大していった。
 1号店の開業から約10年で都内中心に店舗数は約40店舗にまで伸びた。当時、ある業界紙インタビューで、社長は「首都圏で100店のチェーン展開を目指す」と表明していた。テレビやグルメ誌などに取り上げられる機会も増え、ステーキ専門店として確固たる地位を築いていった。

KENNEDY東池袋店

値引きキャンペーンありき

 劣勢を強いられ、顧客呼び戻し策として同社がとった戦略が値引きキャンペーンだった。2割、3割引は当たり前。時には半額キャンペーンを打つこともあった。また、店舗の近隣地でドリンク無料などクーポン付きのチラシを配布したほか、クーポンサイトにも積極的に掲載し、値引きを全面的に押し出して集客を図った。
 ところが、繰り返し打ち出したキャンペーンは麻薬だった。値引きで一時的に客足が回復しても、止めれば元に戻り、値引き自体が利益率の低下にも繋がった。

薄れる「お得感」と募る「割高感」

 値引きの繰り返しは、顧客の心理にも変化が生まれた。「ケネディにはキャンペーン中か、クーポン券を持っている時でなければ行かなかった」と利用者は語る。
 値引きが当たり前になればお得感は薄れる。そればかりか定価販売を「割高」に感じるようにもなる。過度のキャンペーンが顧客離れと利益率の低下という悪循環を招く皮肉な結果となった。その後、値引きを止めてメニューの大幅刷新で対応しようと方針転換したが、時すでに遅し。一度離れてしまった顧客が戻ることはなかった。
 2016年12月期は2期連続の減収も、最終利益は3,787万円を確保し2期ぶりの黒字決算だった。だが、これは毎期実施していた固定資産の減価償却約8,000万円を実施しなかったため。実質は赤字決算だった。
 同期の決算資料によると、自己資本比率は7.0%と危険水域に達し、現金商売の業態にも関わらず当座比率は54.4%まで低下していた。借入金は社債を含め8億900万円まで膨らんだ。また、損益面では店舗の家賃負担が重くのしかかった。FC店はなく、すべて直営だったため年間賃料は1億6,000万円にのぼった。賃料率(地代家賃/売上高)は外食産業で理想とされる10%を上回り、経営悪化が如実に現れている。  今期に入ると仕入債務や店舗の賃料にも事欠くようになった。1月からは取引金融機関から借入金の返済猶予に応じてもらったが、売上減少に歯止めはかからず資金繰りは多忙な状態が続いた。

東京商工リサーチ調べ

 飲食業の倒産が増加している。2017年1-9月の飲食業倒産は565件(前年同期比18.4%増)で、2割増のペースで推移している。  背景には仕入価格や人手不足による人件費の上昇などコストアップが深刻化していることが挙げられる。また、経済指標は改善しても、肌感覚では所得上昇が実感できず、外食に向くお金はむしろ萎んでいるのだろう。
 とはいえ価格改定に踏み切っても、顧客離れを起こさず、好調を維持する企業がないわけではない。固定客を掴み、何十年と経営を続ける街の定食屋は無数にある。外食産業で生き残るには、いかにリピート客を確保できるかに尽きる。
 ワッフル、ポップコーン、パンケーキ・・・。次々にブームが到来し、そのサイクルも目まぐるしく変化する。外食産業は参入が容易な分、生き残るのは難しい。
 流行りだからという理由で行列ができる店は多いが、「1度行けばいいや」と思わせないための魅力、戦略、付加価値が求められている。少なくとも安易な値引きや安さに頼ることではないことを、ステークスの破綻は教えている。

(東京商工リサーチ発行「TSR情報全国版」2017年10月31日号掲載「破綻の構図」を再編集)

東京商工リサーチ データを読む より