楽天<4755>がぐるなび<2440>との資本業務提携を発表しました。楽天がぐるなびの株式467万株を滝久雄会長から買い取った形。相対取引による譲渡のため、取得金額は不明です。が、この発表前の株価が800円台だったことを考えると、投資総額は40億円規模になると考えられます。ぐるなびは業績が絶不調、楽天は飲食事業「ラクー」が箸にも棒にも掛からないような事業になっていました。今回の提携により、楽天は大の苦手分野だったオフラインのローカルビジネスに太いパイプができました。そこからどんな未来が見えるのか、という話です。この記事では以下の情報が得られます。

      

  • ①楽天がぐるなびに接近した背景
  • ②楽天は何を狙っているのか

             

ぐるなびプレスリリース
音声予約システムを導入


刃を研がずに「オワコン化」したグルメサイトぐるなび

ぐるなびは、いち早く飲食のポータルサイトを立ち上げました。ビジネス用語でいわれる「先行者利益」です。マーケットシェアを手中に収め、ネットで飲食店探すなら「ぐるなび」という消費者意識を獲得することに成功しました。今でいうところの「ゾゾタウン」に近いものがあります。しかしながら、ぐるなびはゾゾのように順風満帆とはいきませんでした。なぜか。先行者利益の一つである、検索エンジンの上位表示という特徴以外の武器を作り出そうとはしなかったからです。

口コミの「食べログ」、ホットペッパーの「クーポン」、オウンドメディアの「速報性」。消費者は価値の高いものに吸い寄せられます。店舗や料理の紹介だけをしていたぐるなびは、今になって消費者離れを起こしました。そのことに気づいた飲食店が、広告の出稿を止めました。これまで、ぐるなびの予算を削ると集客が細る、という恐怖心に震えていた飲食店オーナー。しかし、ぐるなびに出稿しなくても他のサイトが認知の不足分を補ってくれることに気づいてしまったのです。ビジネス書として有名な「7つの習慣」の中に、日々研鑽を積んで「刃を研ぐ」このと重要性が書かれています。ぐるなびはそれを怠ったというほかありません。それが業績によく表れています。※このあたりの詳細はこちらの記事も合わせてお読みください。

※( )は前期比

売上高経常利益
2019年3月期予測330億円(8.9%減)13億円(73%減)
2018年3月期361億9700万円(1.9%減)47億8200万円(29.1%減)
2017年3月期369億1400万円(6.9%増)67億4000万円(4.8%増)

2019年度の利益予想が73%減と、震えるほど悪いです。

ぐるなび株価
ぐるなび株価(2016年7月~2018年6月)

そうなると、当然株価にも影響が出てきます。左の図は2016年7月から2018年6月までのぐるなびの株価推移。2016年8月5日に3,165円の高値をつけていますが、そこから決算を重ねるごとに下がり続け、2018年6月22日には870円まで下落しています。

ぐるなびは、この苦境を脱すべく「1000人サポート体制」を打ち出しました。IT企業とは思えない、この泥臭い名前はいったい何なのか。一言でいうとコンサルティング業務の強化です。「飲食店オーナーを”金づる”と見るのはやめます、これからは一緒に繁盛店を作り上げるパートナーとして寄り添います!」ということです。

ところが、飲食店オーナーの要求はやはり厳しいものでした。それを実際にやってみたところ、「意気込みはわかった。じゃあ、今月の売上50万ほど足らないんだけど、どうしてくれんの?」と凄みをきかされたわけです(筆者の想像です)。ぐるなびの営業マンはたじたじ。「じゃ、じゃあ、今度の特集に広告出しましょうか!」といつもの決まり文句しか言えません。そうなると、「結局金づるとしか見てねぇじゃねぇか」とオーナーに言われて、関係を切られてしまうというわけです。

そんなこんなで、ぐるなびの起死回生を狙った人力による業績回復プランも上手くいきません。それを見かねた滝久雄会長。「今後の株価上昇は見込めんなぁ」と、ため息をついて楽天の三木谷浩史氏に株をこっそりと売ったのでした(筆者の想像です)。

想像ではありますが、ぐるなびの再起に時間がかかりそうなのは事実。加えて株価は低空飛行を続けています。そこに楽天が目をつけました。同社は今、「楽天経済圏の超拡大」を打ち出しています。「会員×データ×ブランド」と銘打っている通り、会員数を増やし、顧客データを集め、楽天ブランドがライフスタイルとして定着することを狙っています。ECサイトだけでなく、保険や証券、クレジットカード、携帯電話、広告など様々な分野に手を広げる楽天。顧客の囲い込み(ステップ①)とデータ集め(ステップ②)、そこからの細密なマーケティング戦略による販売促進(ステップ③)、そして業績拡大というストーリーです。今回の資本業務提携は、ぐるなびの会員と契約している飲食店を楽天の経済圏に入れてしまおう、というステップ①の計画です。

下のグラフはぐるなびの契約店舗数と会員数の推移です。契約店舗数が頭打ちになっているとはいえ、6万店舗以上と契約していることは事実。また、会員数も1500万人を超えています。楽天はぐるなびとの提携により、手っ取り早く人と飲食店の両方を囲い込んだわけです。契約店舗や会員がこれ以上離れないため、今のうちに手を打っておいたという側面もあります。

ぐるなび契約店舗数推移
決算説明資料より「ぐるなび契約店舗数推移」
決算説明資料より「ぐるなび会員数推移」
決算説明資料より「ぐるなび会員数推移」