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外食の「ゼットン」を子会社化する衣料の「アダストリア」融合することで生まれるモノとは
カジュアル衣料のアダストリアがレストラン運営のゼットン子会社化する。ファッションビジネスと飲食ブランドを融合させることで新しい事業を開発するのが狙いという。アパレルとレストランが一体になることで生み出されるモノとは何のか。
2021年(2021年1月1日~12月21日)の外食・フードサービス業界は、コロナ禍の厳しい風にさらされ続けた。度重なる緊急事態宣言の発出や、営業時間の短縮要請などにより、多くの企業で業績が悪化。倒産件数は過去最高を更新した2020年に比べると、コロナ関連の支援策が広がったことから、低い水準に抑えられたものの、多くの企業が赤字を余儀なくされた。
この影響はM&Aにも現れており、件数、金額はともに2年連続で減少し、2012年以降の10年間では最低となった。件数は2019年から13件減少し18件となった2020年から、さらに5件減り13件に。金額はこれまでの過去最低だった2017年の97億円の半分ほどの50億円にまで低下した。
また上場企業が他の企業の傘下に入る案件や子会社を売却する案件などが13件中9件に達し、厳しい経営状況が露わになった。
2022年についても早期にコロナ前の状態に戻ることは想像しがたく、厳しい環境が続くことが見込まれる。業績の悪化を理由に子会社を売却するケースや、経営状態の悪化した企業に、買い手がつかないケースなどが増えそうだ。
2021年の外食・フードサービス業界のM&Aで取引金額が最も大きかったのが、カジュアル衣料店大手のアダストリア<2685>が、外食中堅でレストラン「アロハテーブル」などを運営するゼットン<3057>を第三者割当増資の引き受けとTOB(株式公開買い付け)を通じて子会社化すると発表した案件で、取得価格は合計で約28億7600万円。
ゼットンの2021年2月期は16億9200万円の営業赤字に陥っており、2022年2月期は新型コロナウイルスの影響を見極めることが困難として業績予想を未定としている。アダストリアはゼットンを傘下に取り込み、ファッションビジネスと飲食ブランドの融合による新規事業を目指すという。
食材の宅配事業を手がけているショクブン<9969>は、米穀卸の神明ホールディングス(神戸市)を引受先とする第三者割当増資を実施し、神明の子会社になった。同社は近年、業績が振るわず、財務体質が弱まっていたため、第三者割当増資で得た15億7500万円で借入金を一部返済するとともに、新規拠点の整備や営業車両への投資などを実施する。
吉野家ホールディングス<9861>が、傘下の持ち帰り寿司チェーンを主力とする京樽(東京都中央区)をスシローグローバルホールディングス(現FOOD&LIFE COMPANIES<3563>)に譲渡した案件も、吉野家の業績不振が要因の一つとなったようだ。
吉野家は2011年に京樽を完全子会社化したが、コロナ禍の影響拡大で外食産業を取り巻く環境が厳しさを増す中、グループの事業構成を見直し、子会社の売却に踏み切った。
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カジュアル衣料のアダストリアがレストラン運営のゼットン子会社化する。ファッションビジネスと飲食ブランドを融合させることで新しい事業を開発するのが狙いという。アパレルとレストランが一体になることで生み出されるモノとは何のか。