例えば簡単な打ち合わせをする場合、オフィスならばちょっと声がけをすれば済む。ところが在宅勤務では先ずチャットかメールで「お伺い」を立て、時間を調整してから電話かビデオ電話で打ち合わせることになる。これでは効率が悪いというわけだ。
ただ、それだけではない。社内のコミュニケーション不全が原因ならば、現場からオフィス勤務に戻すべきだとの声が上がるはず。しかし、現在の「オフィス勤務回帰」は経営陣主導で進んでいる。彼らが最も懸念しているのは、在宅勤務による「生産性の低下」だ。
独立行政法人経済産業研究所が2021年8月に発表したレポート「新型コロナと在宅勤務の生産性:パネルデータ分析」によると、「在宅勤務の平均的な生産性は依然として職場の生産性に比べて20%程度低い」という。さらにマスクCEOのように「本当にちゃんと働いているのか?」との疑念もあり、部下の働きぶりを自分の目で直接確認したいという管理職も少なくない。
ただ、同レポートによると、この1年間で在宅勤務の生産性は10%ポイント以上改善している。これは在宅勤務の生産性が低かった労働者がオフィスワークに戻ったことや、在宅勤務を効率化するノウハウが蓄積されたためという。「本当にちゃんと働いているのか?」という管理職の懸念に反して、在宅勤務によって浮いた通勤時間の40%強は労働時間に充てられている。
職種や労働環境によっては、在宅勤務でも生産性を引き上げることは十分に可能だ。オフィス賃料コストの引き下げや支給する通勤費の節約、在宅勤務を希望する人材の確保といったメリットを総合的に考えれば、コロナ収束後も活用の余地はあるだろう。企業にもノウハウが蓄積しているだけに、このまま在宅勤務を「コロナの徒花(あだばな)」で終わらせるのはもったいない。
文:M&A Online編集部
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