1990年代以降、右肩上がりで増え続けてきた日本企業による海外企業の買収。長い時を経て、多くの経験を積んできたことで、M&A戦略は徐々に熟練度を増してきた。それとともに、全体の事業構造最適化に向けて、買収だけにとどまらず売却する側のM&Aを手掛ける日本企業も増えてきている。

組織・人事面を中心にクロスボーダーM&Aの支援を行ってきたマーサージャパン グローバルM&Aコンサルティング部門プリンシパル、佐々木玲子氏が語る、日本企業が目指すM&Aの新たなステージとは何か。そして、売り手としての日本企業のM&A戦略のあり方について短期集中連載する。

活況が続き、売り手優位に傾いているM&A市場

――今年も、企業の潤沢な手元資金や国内市場の縮小を背景に、日本企業が海外企業を買収するアウトバウンド型M&Aが非常に活発です。

マーサーが今春に発表した「M&Aにおける人事リスク」についての調査レポートでは、回答者の50%が最近クロスボーダーM&Aを行った、また24%が複数国にまたがるクロスボーダーM&Aを検討する可能性が2014年1月時点よりも高くなった、と答えています。M&Aはグローバル共通の課題として、ますます高い関心を集めていることを示していると言えるでしょう。

一方で、この2~3年のM&A市場は、買い手企業同士の競争が激しくなり、売り手の立場が優位になる傾向が強まっています。強気になった売り手側からは、必要な情報や協力が得にくくなっています。また、入札する企業が増えることで、買収価格も上がりやすいという印象があります。