組織・人事面を中心にクロスボーダーM&Aの支援を行ってきたマーサージャパン グローバルM&Aコンサルティング部門プリンシパル、佐々木玲子氏が語る、日本企業が目指すM&Aの新たなステージとは何か。連載第2回は、PMI(買収後の企業統合)をより高次のものにしていくためのアドバイスを伺った。(前回の記事はこちら

明確な買収の目的を設定して、高い次元のM&Aを目指す

――課題意識のレベルを高めるために大事なポイントは何でしょうか。

事業や組織の強化・再編という課題は、これまで以上に喫緊の課題として捉えるようになっています。海外買収を担当される方や、海外買収先に派遣される日本側役員は、本社から、買収先の現行の延長線での事業計画の推進のみならず、より先の取り組みを見据えて、買収後施策を加速させるように命じられていることも多いようです。

ただ、すべての日本企業が、同じスピードでレベルアップしているわけではありませんし、手掛けてこられた買収案件件数イコール課題意識のレベルの底上げという図式でもありません。

PMI(買収後の企業統合)をより高次のものにしていくには、なぜその企業を買収したいのかという目的がどれだけ明確に定義され、具体的な計画として展開され、徹底して推進されるかいうことにつきると思います。

当たり前のことのように聞こえるかもしれませんが、積み上がった手元資金を使いたいとか、よさそうな案件が出てきたからという理由で目的の明確化がきちんとできないまま行われるM&Aが、いまだに見られるのが実情です。また、当初の目的は明確であったものの、買収担当、PMI担当と案件がわたっていくうちに、だんだんと意識が薄まり、買収後にはそこそこの業績で満足してしまっているケースもあるのではないでしょうか。

――単なる事業の継続から、明確な目的に沿った事業の再編・強化へと、PMIを進化させるには、どのようなことに取り組んだらいいでしょうか。

明確な目的にそった事業の再編、強化という大命題がある場合、それを誰が実行し、結果責任を持つのかをはっきりとさせることは特に重要です。日本企業の場合、海外買収後の事業計画の達成責任は、既存の買収先の経営者に持たせることが一般的かと思います。

ところが、せっかく留任(リテイン)できた、買収先の現地経営陣を相手に、できるだけ波風を立てたくないという気持ちが先に立ち、従来通りを所与として〝お任せ〟してしまうのでは、企業を改革することはできないでしょう。現地経営陣と向き合い、親会社として今回の買収を通じて何を実現したいのか、そのためには彼らに何を実現してもらう必要があるのかという点を縷々と説得し、腹落ちしてもらう必要があります。

そして、彼らに買収後計画のオーナーシップを持ってもらうよう腹をくくってもらわなくてはなりません。また、彼らが達成意欲を高めることができるような報酬やインセンティブをセットで提供することも極めて重要です。

現地経営陣と向き合う過程では、交渉やコンフリクトが発生しますが、そこを避けてはM&Aの進化は望めません。真剣な議論の結果、残念ながら現地経営陣が新たな事業段階に取り組む意思・能力に欠けることが分かった場合は、退いてもらって、新たな経営体制を敷くという決断も求められます。