クロスボーダーM&Aによって獲得した買収先企業の海外子会社に対して、ガバナンスを徹底し、自社の戦略に組み入れるためには、監査や内部統制、管理の仕組みの構築だけでなく、人を派遣して直接マネジメントすることも必要になります。

どのようなポジションで派遣するかは、戦略上の目的と海外子会社の組織としての成熟度によって異なりますが、本稿では、開発途上国の海外子会社を直接管理下におくため、経営トップや部門責任者などの経営幹部として社員を派遣する場合の派遣者の選任についてのべます。

人を使って成し遂げる

開発途上国の海外子会社に経営幹部として派遣する際には、課長や部長といった中間管理職クラスから適任者を選ぶケースが多いでしょう。最近では、若手や中堅社員を育成目的で海外に派遣する企業も増えています。必然的に派遣前よりも広い範囲の業務責任を負うことになります。

ですから、自分の専門分野で確たる知識や経験があるだけでは不十分です。経営幹部としての任務を遂行するためには、自分が「できること」と「できないこと」を正しく判断し、専門外の分野については適切な人を使って成し遂げなければなりません。「相手の能力・資質を見極める力」と「人を動かす能力」があることが、派遣者を選任する際の最重要ポイントになります。

これに反してよくありがちなのが、言語力と仕事上の能力は別物にもかかわらず、日本語ができる現地社員や日本語通訳を重用し依存してしまうことです。そのような状況では情報収集源も偏るし、指示の内容と意図が正しく現場に伝わらない可能性もあります。

たとえ日本語ができなくとも、「能力があり、真面目な社員は誰か?」を正しく見極められるかどうかが、日本人派遣者が現地経営で成功するカギをにぎります。

現地社員の評価では日本語能力よりも、能力があり真面目かどうかの方が重要。