M&A後に買収した海外子会社に重大な不正が発覚するケースがありますが、海外子会社についても本社の責任において適切なコンプライアンス状態が保たれているよう管理する義務があります。

一般的には、内部統制の仕組みや通報制度の導入、コンプライアンス方針を文書化し、研修を通じて徹底するといったことが取り組まれています。

しかし海外子会社の場合、日本の本社とは企業文化も、置かれている社会環境も違い、不正をする「動機」と「機会」も異なるので、日本の本社が考えた施策だけでは不安が残ります。M&Aにより傘下入りした海外子会社では、なおのことでしょう。

そこで本稿では海外でのコンプライアンス管理上踏まえておくべき点として、特にコンプライアンス後発国を念頭に、不正の「動機」のパターンについてみていくことにします。(不正の「機会」については、次回取り上げます)

要注意の「コンプライアンス後発国」

本稿でいう「コンプライアンス後発国」とは、社会全体に「不正」が蔓延しており、人々の「不正」に対する意識も低い国を意味します。アジアや中南米の一部の国を念頭においていますが、その限りではありません。

あくまで現時点についての状態であり、将来的には「後発国」ではなくなることもある点を申し添えておきます。

社会環境は、社員の価値観や優先順位、組織の成り立ちやマネジメントスタイルに影響を与えますが、コンプライアンス後進国では次のような特徴がみられます。

経済格差を背景とする富への渇望

最も顕著な「動機」は、急速な経済発展に伴う格差の拡大で生じたモラルの低下です。富を独占する一握りの階層と、取り残された、あるいは貧困化に向かう中間層という構図がみられます。

そして、こうした富は不動産価値の高騰や社会的地位をテコにして得られたものであり、もはやコツコツ働くだけでは手に入らなくなくなりつつあります。

そのような状況下では、富を獲得する手段として不正が良心の呵責なく選ばれるようになります。不正により得た資金で高級車に乗り、高価な宝飾品を身に着けるといったケースがよく見られます。