クロスボーダーM&A後の人事戦略シリーズ第2回は、海外子会社での不正や横領などのコンプライアンス問題について、人事的な側面からその予防方法を解説します。

コンプライアンス対策といえば、業務プロセス上のチェック機構や承認プロセスの強化、本社のコンプライアンス担当部署が中心となって行う倫理規程の整備、通報制度の設置、社員教育が一般的です。こうした取り組みがあるのとないのでは、社員のコンプライアンスに対する意識が大きく違ってきます。

しかしそれでも、海外子会社の日常を観察することができないため、本社にとって不安が残ります。といってルールや手続きを厳しくしすぎると、組織運営が硬直的になってしまいます。海外子会社の側で裏ルールをつくって対処する、といったことになっては逆効果です。組織の活力や効率を損なうことなく、コンプライアンス違反を予防する方法はないものでしょうか。

自浄力のある組織

答えは、問題がまだ小さいうちに社内できちんと議論され、対策が打たれる「自浄力のある組織」にすることです。問題が生じる可能性を徹底的につぶすということより、「問題は生じるもの」との前提をおき、問題に正しく、迅速に対処することを重視するアプローチです。

「自浄力のある組織」というのは、他者によるコンプライアンス違反を目撃したとき、または自分が当人になってしまったときに、職場内の人間、特に職場の直属上司にそのことを報告・相談できる組織とも言えます。なぜなら、このような組織では問題を認識するタイミングが早く、その分、問題が小さいうちに必要な手を打つことができます。

これが、上司には言わず、同僚社外の友人・知人や通報制度を利用する、あるいは誰にも相談しない場合はどうでしょう。問題把握に時間がかかってしまったり、場合によってはそのまま問題が放置されることになりかねません。

問題を気軽に報告・相談できる環境が、組織の「自浄力」を生む(Photo by Ohlone College)