M&A実施後は、新しいビジョンや事業計画の実行に向けて、買収・被買収会社双方の社員が協力して活動できる環境を速やかにつくる必要があります。そのための方法の一つが人事制度の統合です。

買収会社の本社(グローバル本社)は被買収会社の人事制度を自社の人事制度(グローバル人事制度)に統合することで、人的リソースを大枠で管理できるようになります。メリットはそれだけではありません。社員の意識や行動をリセットし、優秀な人材を旧組織の枠を超えて活用するために人事制度統合は有効です。

「優秀な人材の把握と活用」のための人事制度統合

前回はM&A後に手軽に実施できる、人員構成や人件費のコントロールを目的とした人事制度統合について述べました。今回はそれよりも本格的な、「優秀な人材の把握と活用」を視野においた人事制度の統合について解説します。社員の立場からみれば、自身のキャリアが広がるチャンスが増え、所属意識も旧組織からM&A後の新組織へと変わるきっかけとなります。

被買収会社の優秀な人材を把握し、適切なポジションや仕事にアサイン(任命)するためには、買収会社による人事評価、昇格、配置決定への介入が不可欠です。一連のプロセスをグローバルで統一し、グローバル本社が最終承認します。

買収した企業の優秀な人材を把握・活用するには人事制度の統合が欠かせない(Photo by Gerd Altmann)

具体的にいうと、まず人事評価の対象期間、評価項目をグローバルで統一します。ただし、項目全てを同じにする必要はありません。統一的な項目をもちつつも、各組織が自由に項目を設定できるよう裁量余地を残します。その方が各組織の特性やニーズに即した評価ができ、被買収会社に在籍する社員の経営統合に対する抵抗感を解消できる可能性が高まります。

各法人や拠点の最終責任者とグローバル本社の責任者は、人事考課の結果を持ち寄り、人事考課の妥当性や昇格、配置計画についてディスカッションを行います。対面での議論は、点数や文章で記された人事データからは得られないような、濃い情報を与えてくれます。なぜそのような評価になったのか、根拠となる出来事も含めて聞くことができて、社員一人一人をより立体的に把握することができます。