低位株ヤフーを売って成長株を買う孫正義氏の華麗な投資手腕

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株主還元
株主に最大限配慮した今回のスキーム


ヤフーの自社株買いにより既存株主に配慮

今回の再編のわかりづらさは、ヤフーがSBGにTOBを実施し、更にSBKKに新株を発行していることにあります。なぜ、SBGがSBKKに直接ヤフー株を売却しなかったのでしょうか?

理由は3つあります。

1.SBGがSBKKから直接資金を調達することの批判回避
2.ヤフーの自社株買いによる既存株主への配慮
3.節税           

SBGが直接ヤフー株をSBKKに売却すれば、子会社をATMにするなという、凄まじい批判が飛ぶことは間違いありません。従って、そのスキームは絶対に組めません。

スキーム図
スキーム図(当社とあるのがヤフー)

そこで、ヤフーがSBGにTOBを実施する形にしたのです。買い付け価格は1株287円。発表があった前日の終値が302円ですので、SBGは市場よりも低い価格で売却したことになります。それにより、「ヤフーを子会社に高く売りつけた」といった批判を受けずに済みます。

さらに、ヤフーの株主にも配慮をしました。ヤフーがSBKKに実施する第三者割当増資の1株価格は302円です。SBGがヤフーに売却する株数は18億3400万株。SBKKが引き受ける株数は15億1100万株。すなわち、今回の付け替えスキームによりヤフーの自社株買いが行われ、グループ内の株式が18%引き締められたのです。

自社株買いは、株価の重要指数であるPERを割安水準に押し下げる効果があります。PERは株価の割安性を判断するものです。株価を1株当たりの利益で割って算出します。1株利益で算出するので、株数が引き締められると、1株当たりの利益が膨らんでPERが下がります。それが割安と判断されて、株価が上がる傾向があるのです。実際、ヤフーの株価は341円まで上昇しました。

こうして、ヤフーの既存株主もメリットを享受することができました。

そして節税のメリットも見逃せません。通常、ヤフー株を売却すると配当を受け取ることになり、課税対象となります。しかし、受取配当等の益金不算入制度により、3分の1超を保有するSBGは非課税になるのです。

節税効果によりSBG内部に資金が積み上がり、株主もそのメリットをうけることができる形に仕立てた、見事な手法です。

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