伊藤忠商事がデサントに対して実施した敵対的TOB株式公開買い付け)は成立し、伊藤忠側の勝利となった。TOBの結果、もともと筆頭株主である伊藤忠のデサント株の保有割合は従来の30.44%から40%に上昇し、デサントの支配権を事実上握った形だ。

デサント「改めて建設的に協議したい」

デサントは18日、伊藤忠によるTOB終了を受け、「改めて伊藤忠と建設的に協議してまいりたいと考えており、対話を開始している」とのコメントを発表した。敵対的TOBに発展した伊藤忠との協議では創業家出身の石本雅敏社長の進退を含めた経営体制刷新が最大の焦点とみられるが、「社長の選任を含む当社の経営体制に関して、現時点で決定された事項はない」としている。

伊藤忠が15日に公表したTOB(1月31日~3月14日)の結果は目標買い付け数(上限)721万株に対して応募数が2倍以上の1511万株余り。取得総額は約202億円(1株あたり2800円)で、決済開始日は3月22日。

伊藤忠によるTOB開始後、両社の話し合いは2月中旬に4度行われた。しかし、意見の隔たりが大きく、伊藤忠は2月28日に協議を打ち切り、TOB終了後に協議を再開する方針を示した。その際、デサント側が譲渡しない場合、6月の定時株主総会を待たずに、臨時株主総会の開催を提案する可能性にも言及した。

伊藤忠、形勢優位か

双方が妥協点を見いだせなければ、株主総会に向けて委任状の争奪戦に発展する可能性もある。ただ、デサント株を約7%保有する中国のスポーツ用品大手の安踏体育用品(アンタ)が伊藤忠を支持する意向だと伝えられ、デサントにとって分が悪い。デサントとしては役員構成や経営方針の見直しなど難しい判断を迫られることになりそうだ。

国内のTOB件数は年間50件前後で推移している。このうち相手企業の賛同を得ないまま行う敵対的TOBは年に1件あるかどうかで、極めて限られる(表を参照)。最近の動きをみると、2018年と2017年が各1件、16年がゼロ、15年が2件。これら4件の敵対的TOBはいずれも成立したが、案件としては小ぶり。

大手企業同士が争うケースとしては2006年に王子製紙(現王子ホールディングス)が経営統合を目的に北越製紙(現北越コーポレーション)に敵対的TOBを仕掛けて以来13年ぶりだ。王子と北越の攻防では、北越が三菱商事を引き受け先とする新株発行を強行するなどして、王子のTOBを阻止した。

また、2000年代には村上ファンドやライブドアの存在が良くも悪くも一世を風靡し、敵対的TOBをめぐる攻防戦に世間の関心が集まった。

ハードランディングとなるのか

今回の伊藤忠・デサントの一件は現時点でTOBを終えたに過ぎない。デサントとしては50%超の株式を握られて伊藤忠の子会社になったわけでもない。着地点に向けて、ハードランディングとなるのか、それともソフトランディングとなるのか。

◎主な敵対的TOB(〇は成功、×は失敗)

買い手対象企業
2000〇独ベーリンガーインゲルハイムエスエス製薬
2001×村上ファンド昭栄
2005×夢真ホールディングス日本技術開発
×ライブドアニッポン放送
2006×ドン・キホーテオリジン東秀
×王子製紙北越製紙
2007×スティール・パートナーズ(米)ブルドックソース
×スティール・パートナーズ(米)天竜製鋸
2011〇DRCキャピタルコージツ
2013×サーベラス(米)西武ホールディングス
2015〇ECMマスターファンドSPVセゾン情報システムズ
〇テクノグローバル新華ホールディングス・リミテッド
2017〇佐々木ベジ氏ソレキア
2018〇日本アジアグループサンヨーホームズ
2019〇伊藤忠商事デサント

文:M&A Online編集部