暗雲が立ち込めていた中堅印刷会社「廣済堂」のTOB株式公開買い付け)を通じたMBO(経営陣による買収)計画が一転、前進する運びとなった。

買付予定数の下限を所有割合「50%」に下げ

廣済堂は8日、米投資ファンドのベインキャピタルが同社に対して実施中のTOBについて、買付価格を610円から700円に引き上げる一方、買付予定数の下限を1660万9000株(所有割合66.67%)から1245万6800株(同50%)に引き下げると発表した。12日までだった買付期間は25日に延長した。

廣済堂へのTOBをめぐって旧村上ファンド系のレノ(東京都渋谷区)による株買い占めが2月初めに表面化した。これをきっかけに、市場価格がTOB価格を20%近く上回る高値で推移。12日に迫った買付期限を前に不成立が避けられない情勢だったが、ぎりぎりの段階で局面転回を図った形だ。

同社は2月中、レノとレノと関係が深い村上世彰氏との間で計5回の協議を実施したとしており、TOB価格の引き上げは村上氏側の意見を踏まえたものとみられる。

8日の廣済堂株の終値は717円(前日比6円高)。市場価格が引き上げ後のTOB価格を上回っており、TOBに応募するよりも市場売却した方がなお有利な状況。

そこで、買付予定数の下限を所有割合で当初の66.67%から50%へとハードルを下げた。果たして、起死回生策となるか。会社側は「当社株式の市場取引の状況や本公開買い付けの成立の確度を高める必要性を総合的に勘案した」と説明している。

廣済堂へのTOBはベインキャピタルが1月18日に開始。現経営陣の要請に基づくMBOの一環として行われ、完全子会社化による株式の非公開化を目的とする。したがって、仮にTOBが成立したとしても、成立後の所有割合がどうなるのかによって完全子会社化への道筋が違ってくる。

TOB後のベインキャピタルと経営陣の所有割合が90%以上であれば、残りの少数株主に株式売り渡しを請求できる。スクイーズアウト(少数株主排除)と呼ばれる手続きの一つで、株主総会での決議も不要だ。ただ、株価動向に加え、創業家大株主の反対などもあり、TOBへの応募が90%を超えることは考えにくいのが実情だ。

3分の2以上ならスクイーズアウトを実行だが

所有割合が66.67%(3分の2)以上90%未満の場合、6月開催予定の定時株主総会で株式併合を提案する予定。株式併合もスクイーズアウトに用いることができる。複数の株式を1株に統合し発行済み株式数を減らすもので、株主に与える影響が大きいことから、株主総会特別決議が必要となる。

50%以上66.67%未満にとどまった場合はどうか。スクイーズアウトの手続きを実行できないが、引き続き非公開化の実現を目指すため、株主の理解を求め、状況に応じて株式を譲り受けることも検討するとしている。

TOB開始時に400円台だった株価は、レノによる買い占めが判明した2月初め、848円の昨年来高値をつけた。市場価格がTOB価格を上回る高値で推移しているのを受け、26日、TOB期間を7営業日延長して3月12日までとするスケジュール変更をいったん発表した。

レノ、書簡内容を撤回

8日の発表資料によると、レノから2月4日付で同社株式の上場維持を前提とした公開買い付けの初期的な提案を含む書簡を受け取った。その後、村上世彰氏を含めたレノ側と5回の話し合いを水面下で行い、最終的に2月22日にレノから当該書簡の内容を撤回する旨の書簡を受領したとしている。レノは廣済堂株式の9.55%(共同保有分を一部含む)を保有するが、TOB賛同に回る可能性が高い。

TOBの行方はいぜん株価次第といえるものの、一時の絶望的な状況を脱し、成立に向けて展望が開けてきたのは間違いなさそうだ。

◎廣済堂TOBMBO)をめぐる動き

1/17米ベインキャピタルと組んでTOBによるMBOを発表
1/18TOB開始(1株610円)
2/4レノの大量保有(5.83%)が判明
レノから書簡を受領
2/6一時848円の昨年来高値
2/18創業家株主、監査役の一人がTOBに反対表明
2/22レノから4日付書簡の内容を撤回する旨の書簡を受領
2/263月1日までとしていたTOB期間を3月12日に延長すると発表
3/8TOB期間の再延長(3月25日)や買付価格引き上げなどの条件変更を発表
3/25TOB終了

文:M&A Online編集部