日本たばこ産業(JT)のカナダ子会社「JTIマクドナルド」が健康被害に対する巨額の損害賠償を命じられた。これを受けJTIマクドナルドは賠償額が支払い能力を超えているとして、日本の会社更生法に当たるカナダの企業債権者調整法を申請し承認された。このためJTIマクドナルドは通常通り事業を継続することが可能で、係争中のすべての訴訟手続きも停止することになった。

JTは1999年以降海外で実施した、たばこ関連のM&Aは14件に達し、世界各国でたばこ事業を展開している。このためカナダのように喫煙と健康にかかわる集団訴訟があちらこちらで起こることが予想され、訴訟の火種はくすぶり続けることなりそうだ。

カナダの子会社に1480億円の賠償命令

カナダケベック州でJTIマクドナルドに対する喫煙と健康にかかわる集団訴訟が起こされ、2015年6月にケベック州上位裁判所は、JTIマクドナルドに対し約20億カナダドル(約1672億円)の支払うよう命じる判決を下していた。

JTIマクドナルドはこれを不服として控訴していたが、2019年3月1日(現地時間)にケベック州控訴裁判所はケベック州上位裁判所の判決を支持し、JTIマクドナルドに17億7000万カナダドル(約1480億円)の支払と賠償金の一部1億5000万カナダドル(約120億円)分の前払いを命じていた。

これに対しJTIマクドナルドは賠償額が支払能力を超えているとして、オンタリオ州上位裁判所に、事業を継続しつつビジネスを再構築しくことを目的とした法律・企業債権者調整法を3月8日(現地時間)に申請し、同日に承認された。このあとJTIマクドナルドは通常通り事業を行いつつ、上告手続きを行う方針という。

たばこ関連M&Aの投資総額は4兆5000億円

JTはこれまでに多くの海外M&Aを行ってきた。主なたばこ関連のM&Aとしては1999年に米国の大手たばこ食品会社であるRJRナビスコから、たばこ事業を譲受したのが始まり。譲受金額は9400億円に達した。

さらに大きな金額を投じたのが2007年に実施した英国ギャラハーの買収で、買収金額は2兆2500億円。2016年に米国のNatural American Spiritから米国外たばこ事業を譲り受けた案件にも6000億円を投じた。

このほかにも多くのたばこ関連のM&Aを実施し、1999年以降のたばこ関連の主なM&A14件の投資総額は4兆5000億円にも達した。

JTは2017年のアニュアルレポートで、2017年12月期にJTグループと、買収したRJRナビスコ社の米国外の事業で、責任を負う訴訟が21件あり、将来、喫煙と健康に関する訴訟が提起される可能性があるとしている。

さらに係争中の訴訟や将来の訴訟がどのような結果になるのか予測できず、好ましくない結果になった場合は業績に悪影響を及ぼす可能性があるともしている。

同じアニュアル・レポートでは「JTは喫煙と健康に関する訴訟に一度も敗訴しておらず、和解金を支払ったこともない」とする部分がある。

いつまでこの文言を残すことができるのか。カナダでの成り行きが注目される。

たばこ関連の主なM&A金額
1999 米国のRJRナビスコ社から米国外のたばこ事業を取得 9400
2007 英国のギャラハー社を完全子会社化 22500
2009 英国の葉たばこ会社Tribac Leafのアフリカ、アジアの葉たばこ事業を譲り受け
2011 スーダンのたばこ会社Haggar Cigarette & Tobacco Factoryを子会社化  351
2012 ベルギーの手巻きたばこ会社Grysonを子会社化 510
2012 エジプトの水たばこ会社Al Nakhla Tabacco Companyなど2社を子会社化
2014 英国の電子たばこ会社Zandera社を子会社化
2015 米国の電子たばこ会社Logic社を子会社化
2016 米国のNatural American Spiritから米国外たばこ事業を譲受け 6000
2017 フィリピンのたばこ会社MC社のたばこ事業にかかる資産を取得 1040
2017 インドネシアのたばこ会社2社(KDM、SMNグループ)を子会社化 1100
2017 エチオピアの大手たばこ会社NTE社を子会社化 490
2018 ロシアたばこ4位のドンスコイを子会社化 1900
2018 バングラデシュ2位のたばこ会社 アキジ・グループのたばこ事業を買収 1640

※金額は億円。-は金額非公表

文:M&A Online編集部