イスラエルでは上場よりも企業売却が主流

そもそもイスラエルに、なぜ世界レベルの技術を持つスタートアップ企業が多いのか?平戸社長は「よく言われていることだが、やはり軍事技術を民間転用していることが大きい」と指摘する。イスラエルには徴兵制があり、「(イスラエル参謀本部諜報局情報収集部門の一部署である)8200部隊には極めて優秀な若者を送り込まれている。8200部隊の出身者の多くは起業しているが、部隊で身に着けた高度なハッキングなどの技術がスタートアップに役立っている」(平戸社長)そうだ。

イスラエルでは企業だけでなく、技術者の獲得も激しくなっているという。旧ソ連邦のウクライナ、ベラルーシ、ジョージア(旧グルジア)などの企業が、積極的な人材引き抜きに乗り出している。これにはイスラエルの総人口の約20%がロシア語話者であることも関係しているようだ。

イスラエル企業はB2B(企業間取引)の技術系企業が多いという事情もあって、EXIT(創業した企業の株式が流動化する局面)では、新規上場(IPO)よりも企業売却を選択する企業が主流。「シリーズAレベルのスタートアップに2億~3億円単位で数%出資するというケースが多い。取締役を送り込みたいのなら、20~30%は出資する必要はある」と、平戸社長は指摘する。

日本企業によるイスラエル企業へのM&Aは、ここ2年ぐらいで急増している。「日本企業によるイスラエル企業への資本参加は、すでに100社を超えている。日本企業は純粋な投資よりも、自社のビジネスに結びつけることを狙った出資が多い」(平戸社長)という。

政府の後押しもあり、日本とイスラエルの経済交流は活発に(首相官邸ホームページより)

「イスラエル企業は技術こそ優れているが、顧客が何を求めているかなどのマーケティングは苦手。特に日本市場のことは、ほとんど知らない。そこはM&Aした日本企業が補完できるところ」と、平戸社長は指摘する。

文化的にはずいぶんと違うイスラエル企業だが、互いに理解していくことでM&Aを成功させることが十分に可能だ。「イスラエル企業とは、直接会いに行って話すのが一番」と、石森社長も話す。何はともあれ、興味があるのならば先ずはイスラエルに足を運んでみよう。

文:M&A Online編集部