中国企業のM&A戦略を紹介するシリーズ。今回は2004年に、IBM社のパソコン(PC)部門を買収した「レノボ(Lenovo)」を取り上げる。レノボはその後、NECや富士通のPC部門も買収した。2014年には、携帯電話機大手の米モトローラをグーグルから買収している。

レノボ…1984年に中国科学院の研究者が設立

レノボは、1984年、中国の研究機関である中国科学院の研究所員により、設立された。当時の名称は中国科学院計算所新技術発展公司で、外国ブランドの販売から出発した。1988年、香港聯想電脳公司を設立し、1989年に香港聯想集団公司に改称して香港で独自ブランドを発売した。

1994年には、香港株式市場に上場を果たした。その後は、独自ブランドのデスクトップPCを市場に投入するなどした。1996年には中国国内シェア1位を獲得している。中国国内で足場を固めたレノボは世界市場に打って出るための準備を整えていた。

IBM買収で知名度が一気に上昇

レノボは、IBMのPC部門買収に先立ち、「Legend」(レジェンド)というブランド名と英語の会社名をレノボ(Lenovo)に変更した。レノボブランドのパソコンは、中国国内ではシェアを拡大していたが、中国国外においては、ほとんど知られていない存在だった。

レノボのブランド戦略により、IBMのPC部門は買収され、IBMのブランドである「ThinkPad」などの商標も獲得することになる。当時、この買収により、PCの世界市場のシェアは、デル、ヒューレット・パッカードに次ぐ第3位となった。

2004年、IBMのPC部門の買収が発表された当時、このニュースの反響は大きかったと記憶している。筆者は2003年以降、中国在住であったが、それまでレノボを知らなかった。このニュース以降、レノボの知名度は上がり、この時の中国国内の反響は、2014年にアリババがニューヨーク市場に上場したときくらいのインパクトではなかったかと個人的には思っている。

米沢市のNEC工場でThinkPadを生産

2011年、レノボとNECは合弁会社を設立し、その100%子会社としてレノボ・ジャパンとNECのPC事業を担うNECパーソナルコンピュータの両社を傘下に置く事業統合を実施した。実質的なレノボによるNECのPC事業買収である。

その後、NECの米沢工場で、「ThinkPad」の一部の生産が行われるようになる。ThinkPadの米沢生産モデルは、特別モデルのPCとなり、「米沢ブランド」として確立されてきた。レノボがIBMとNECを買収しなければ、米沢ブランドのPCが生産されることはなかったかもしれないと考えるとおもしろい。

今度は富士通のPC部門を買収

2017年には、富士通のPC・タブレット部門であった富士通クライアントコンピューティング株式会社をレノボが買収した。NECと同様、富士通の拠点などは廃止せず、富士通ブランドを維持している。富士通は今後も、PCへのAI搭載など、独自の技術を維持していくとみられている。

PCの次は携帯デバイスへ

2014年、レノボは、グーグルから、アメリカの携帯電話機大手、モトローラ・モビリティーを買収した。レノボは、もともと中国国内では、スマートフォンを開発・販売しており、中国国内では販売シェアを持っていた。これにより、レノボは、ついにアメリカ国内の携帯電話市場に参入することになる。

レノボ・グループの2018年4月~6月期の連結決算は、最終損益が約85億円(約7,700万米ドル)の黒字となり、前年同期から黒字転換したと発表された。

                                   文:M&A Online編集部