手強いイスラエル企業との交渉

しかし、イスラエル企業はなかなか手ごわい交渉相手(タフネゴシエーター)だ。「楽天時代に30~40カ国の買収にかかわったが、イスラエル企業が最も大変だった」と、平戸社長は振り返る。「自分たちの技術に絶対的な自信を持っており、買いたければ買ってくれという感じ」(平戸社長)だったそう。

「合意後にいきなり別条件を突きつけられることも」と、石森アドイノベーション社長

買われる側も大変だ。「基本合意を結んだ後に、いきなり後出しジャンケンのような条件を突き着けてくることもあった」と石森社長は振り返る。イスラエル企業の交渉は、徹底的に本音ベース。だから言いにくいこともズバズバ言ってくる。

日本人から見ればかなり「攻撃的」だ。もっとも「彼らは冷徹で割り切っているわけではなく、一度打ち解ければウェットな付き合いをするし、感情面のフォローもきちんとしてくれる」(石森社長)という。

イスラエル企業はタフネゴシエーターではあるが、「ロジック(論理)が通っていて、こちらが強気で交渉すれば意外と要求は通る」(石森社長)という一面も。イスラエル企業とのM&A交渉では「ロジック」がモノを言うようだ。情に訴えるのではなく、論理的な説明と駆け引きが重要になる。

気をつけたいのは、イスラエル企業との交渉で「日本人的な受け答えは絶対にダメ」(平戸社長)ということ。「『一旦、社内で持ち帰って検討します』などと話そうものなら、『ディール(交渉)は成立した』と誤解される」(同)ことになりかねない。「ダメな時は、はっきりダメと主張しないと、後々にトラブルの元になる」(石森社長)。十分に留意したい。

交渉の過程で日本人が傷つくことも。「会議で何もしゃべらないと、役員クラスの出席者であっても部屋から出て行ってくれと平気で言われる。しかも、先方には悪気がない」(平戸社長)というから、なかなか強烈。「執行役員は従業員だから席を外してくれ。取締役とだけ話し合いたいと言われたこともある」(石森社長)そうだ。そういう状況を想定して、交渉メンバーを選びたい。

イスラエルのスタートアップ企業と日本企業を仲介をする平戸社長は「日本の商慣習だと明らかに無礼な発言がイスラエル側から飛び出すこともしばしば。そういう時は会議室から即座に彼らを連れ出して説教する。なぜ日本ではダメなのかをきちんと説明すれば、彼らも納得する。たとえば根回しはなぜ必要なのかを、歴史的な背景から説明するといった具合に」と打ち明ける。お互いに誤解のないスムーズな交渉のためにも、イスラエルの事情をよく知る仲介者を立てることも検討すべきだろう。