中国企業による日本企業の買収事例4:テンセント・グループ

中国企業のM&A戦略について、特に日本企業と関連する部分にスポットを当てて紹介する。第4回は、ソフトバンク・グループの子会社で、クラッシュ・オブ・クラン等のゲームを提供するフィンランドの会社「スーパーセル(Supercell)」を買収した「テンセント・グループ」を取り上げる。

テンセント、ソフトバンク傘下のスーパーセルを買収

2013年、ソフトバンク・グループはスーパーセルを買収し、子会社化した。その後、2016年6月、ソフトバンク・グループが保有するスーパーセルの全株式を段階的にテンセント・グループに売却すると発表した。

 (参考)ソフトバンク プレスリリース テンセントによるスーパーセル株式取得について

「テンセント・グループ」はどんな会社か?

テンセントのロゴ

ソフトバンク・グループの子会社売却により、テンセント・グループが日本でも注目されたが、テンセントという企業を知らない人も多かったのではないだろうか。

テンセント・グループの持ち株会社であるテンセント・ホールディングズは、数年来、アジア企業の時価総額ランキングでアリババ・グループと首位争いを展開しており、時価総額45兆円[1]を超す大企業である。

テンセント・グループは、1998年に中国・深セン市で設立されたインターネット関連企業であり、2004年に香港証券取引所に上場した。現在では、香港ハンセン株価指数の構成銘柄にもなっている。

[1]香港ドルの時価総額9月30日付(テンセントHPより)為替レートは9月30日付の14.41円で計算。

中国版Lineと言われる「WeChat(ウィーチャット)/微信(ウェイシン)」

テンセント・グループは、コミュニケーション・ツールであるQQ(キューキュー)やWeChat(ウィーチャット)を展開しており、その他インターネットを通じて、ソーシャルネットワーキングやオンラインゲーム、ニュースサービスやビデオコンテンツといった多様なサービスを提供している。

QQは、現在のようにスマホが普及する前のパソコン時代から、中国大陸では最もポピュラーなインスタントメッセンジャーであり、若者の間で広く使われていた。

2010年、テンセント・グループは中国版Lineと言われるスマホ向けの「WeChat(ウィーチャット)」の展開を開始する。中国語で「微信(ウェイシン)」(短いメッセージの意味)と呼ばれるこのチャット・アプリは、LineやFacebook、Twitterの使用が実質的にできない中国大陸においては、必須のチャット・アプリとなり、爆発的に普及した。実は筆者もWeChatユーザーで、仕事でも使っている。

ゲーム会社の買収を進めるテンセント・グループ

登録アカウント数が11億を超えているWechatであるが、テンセントは同ユーザー向けにゲームを提供することを主な収益源としており、テンセントの売上高の過半はゲーム事業と言われている。

テンセント・グループは、スーパーセル買収の他にも、2011年に世界中で大人気のオンラインゲーム「リーグ・オブ・レジェンズ」を手掛ける米ライアットゲームズ社を買収するなど、世界の有力ゲームメーカーを傘下に収め、コンテンツを強化することで、事業拡大を続けている。

買収されたゲーム会社「スーパーセル」とは?

スーパーセルのロゴ

スーパーセルは、2010年、フィンランドのヘルシンキで設立されたモバイルゲーム開発会社である。本拠地はヘルシンキだが、サンフランシスコ、東京、ソウルおよび北京に拠点を持っている。

スーパーセルのゲームは、タブレットやスマートフォン用に開発されており、大成功したコンテンツとして、ヘイ・デイ、クラッシュ・オブ・クラン、Boom Beach、Clash Royaleという4つのゲームがある。

スーパーセルは、「最高のチームが最高のゲームを作る」という信念のもとに設立され、「セル」として知られるいくつもの小さな自立したチームが存在するユニークな組織で運営されている会社である。

スマホで支払う中国人。テンセントのモバイル決済「WeChat Pay」

テンセント・グループは、インターネット関連事業の他にも、アニメ市場に参入したり、人工知能の開発を進めたりと、多角化を進めているとも言われている。

そしてもう一つ、力を入れているのが、「WeChat Pay」というWechatと一体化したモバイル決済である。知らない人もいるかもしれないが、今や中国はモバイル決済の最先進国である。

今年(2017年)、筆者が上海で人気のパン屋で買い物をしたとき、10人ほどの客がレジに並んでいたのだが、筆者以外の全員が(※誇大表現ではなく、本当です!)スマートフォンで支払いをしていた。コンビニやスーパーはもちろん、目の前の人とQRコードでお金のやりとりができるようにもなっている。

テンセント・グループの今後は?

中国の電子マネーによるモバイル決済は年間600兆円に達しており[2] 、数年でキャッシュレス社会になると言われている。それを後押ししているのが、アリババの「アリペイ」と並んで、テンセントの「WeChat Pay」である。

今後、テンセントの「WeChat Pay」がどれだけシェアを伸ばしていくのか。中国のモバイル決済拡大の動向とともに、注目していきたい。

 [2]日経電子版 2017年3月24日より

文:M&A Online編集部