中国企業による日本企業の買収事例5:百度(バイドゥ)

10月10日の米株式市場で、中国 阿里巴巴集団(アリババ)の時価総額が4700億ドル超と米国アマゾンを上回ったことで、世界が中国企業に注目している。

前回に続き、中国企業のM&A戦略について、特に日本企業と関連する部分にスポットを当てて紹介する。本日は、東京大学発のベンチャー企業「ポップイン(popIn)」を買収した「百度(バイドゥ)」を取り上げる。

2015年、中国最大の検索エンジンの会社「百度」の日本法人である「バイドゥ株式会社」は、東京大学発のベンチャー企業である「ポップイン」の全株式を取得し、経営を統合すると発表した。買収金額は公表されていないが、推定で10億円程度[*1]と報道されている。

東大発のベンチャー企業「ポップイン」

ポップインは、東京大学エッジキャピタルUTECから投資を受け、同大学施設内に拠点を置いて活動してきたベンチャー企業である。

創業者の程涛(チェン・タオ)氏は、1982年中国生まれ。東京工業大学卒業後に、東京大学情報理工学研究科の修士課程での発明をビジネス化するため、2008年にポップインを創業した。

程涛氏は「留学生として来日した当初は、友だちも家族もお金もなかった。日本で成功できたのは産学連携のおかげ。身近な事例として見てほしい。もっと多くチャレンジャーが出てくることを期待している」と語ったという。

ポップインが開発した技術「READ」とは?

ポップインは、読み飛ばしを防ぐ広告システムを中心とした「コンテンツ発見プラットフォーム」を提供している会社である。

ポップインが提供する新指標「READ」では、記事毎に熟読層・閲覧層・流し見層の割合を可視化することができるという。サイトに表示された広告文などについて読み終わるまでにかかる時間を算出し、閲覧者が実際にサイトにとどまった時間から熟読されたか読み飛ばされたか、読み込み度合いを測定する。

ポップインの公式ウェブサイトによると、READの技術をこう記している。

“メディアはPV数を最重要のKPIとしていますが、記事内容へのユーザーの満足度を知るためには、記事の読了状況(熟読したのか、流し見したのか)を把握しなければなりません。我々が提供する「READ」は、記事コンテンツの本文領域がユーザーの可視領域に入っているかを判定し、その経過時間と情報量から正確な読了状況を測定します。"

通常の広告の指標にはクリック率やコンバージョン率が使われているが、これではタイトル興味でクリックしただけなのか、それとも興味を持って熟読していたのかはわからない。ネイティブ広告にはコンテンツの主観指標が必要であり、「READ」はネイティブ広告の指標に適していると言われている。

「ネイティブ広告」とは何か?

ネイティブ広告とは、記事に似た体裁の新たなタイプのネット広告として注目されているものである。ポップインの技術は、このネイティブ広告の効果検証にも利用され、既に200以上のニュースサイトが導入しているという。広告を読んだ人に別の広告を推薦する機能もあわせて提供している。

ポップインの技術の顧客は、企業などの広告を掲載するサイトの運営会社である。従って、広告の精度を高めればサイトの媒体価値を引き上げることができる。

グーグルに続く検索エンジン第2位の「百度(バイドゥ)」

ポップインを買収した「百度(バイドゥ)」は、検索回数ではグーグルに続く世界第2位[*1] の企業である。実質的にグーグルが使用できない中国国内では、百度は圧倒的なシェアを誇っている。

「インターネットで検索して調べる」という意味の単語で「ググる(google it)」という言葉が日本語でも英語でも一般的に使われて久しいが、同様の意味の単語を中国語では「百度一下(読み:バイドゥイーシャー)」という。

このことからも、中国国内において、どれだけ百度が浸透しているかが分かるだろう。筆者も中国語検索をする際は、百度で検索している。

百度の成長-時価総額は850億米ドル

中国百度の創業者である李彦宏(ロビン・リー)氏は、北京大学を卒業後、ニューヨーク州立大学へ留学した。中国に帰国後、2000年、北京で中国百度を創業した。その後急成長を遂げ、2005年5月アメリカ市場のNASDAQに上場した。

百度の株式は、株式公開初日、公募価格の27米ドルから122.54米ドルまで急騰した。当日の上げ幅は354%まで上がり、アメリカの証券市場、株式公開初日に最多利益を上げた株式のひとつとされている。現在では時価総額850億米ドル[*2]を超える大企業となっている。

ポップインの技術をどう生かすのか

ネイティブ広告のマーケットは急速に成長しており、モバイル化も加速している。中国で最大級の広告プラットフォームを保有する百度は、世界における広告関連ビジネスに注目している。

これからさらに加速するとされているネイティブ広告市場の成長背景を踏まえ、百度はポップインの先進的なネイティブ広告技術を日本から中国へ、さらにはアジアを中心とした世界への展開を考えていると言われている。

ネイティブ広告の成長と共に、百度・ポップインの成長にも注目していきたい。

*1 日経電子版 2015年6月8日より
*2 2017年10月7日付 ブルームバーグHPより

文:M&A Online編集部