ASEANが設立から50周年を迎えた。2017年11月13日にはフィリピン・マニラでASEAN首脳会議が開かれ、安倍晋三首相はASEANでの「質の高いインフラ」投資による連結性の強化や産業基盤の整備、円借款の迅速化といった経済連携策を引き続き進めていくことを明らかにした。日本企業によるASEAN企業のM&Aは現在も増加傾向にあるが、今後さらに加速するのは間違いない。しかし、ASEAN企業とのM&Aには思わぬ「落とし穴」もある。そこで現地でM&Aの組織や人事についてのコンサルティングに当たっているマーサーシンガポール M&Aトランザクションサービス部門 プリンシパルの宮寺宏器氏に最新事情を聞いた。

活発なASEANでのM&A

-経済成長が続くASEANだけに、日系企業によるM&Aも活発なのでしょうね

 意外にも統計上は2014年の118件をピークに減少しています。ただ、これは公表されたM&Aだけで大企業が中心です。中小企業によるM&Aを含めると2014年以降も増加しており、今年も過去最高を更新するのではないかと予想しています。

-中小企業のM&Aとなると、初めてのケースも多いでしょう。経験が浅いがゆえの失敗もあるのでは

 最も多い失敗は現地とのコミュニケーション不足ですね。実はASEANの人たちは同じアジア人とはいえ、文化はかなり違います。むしろASEANは日本よりも欧米に近い部分も少なくありません。「アジア人同士だからわかるだろう」という思い込みは禁物。ASEAN企業でもマネジメント層は英語を話せますが、日系企業側の英語に対する苦手意識がコミュニケーションのネックになっています。

 もっともこれは英語力だけの問題ではありません。ASEANの人たちは発音や文法が間違っていても、積極的に英語で話します。一方、日本人は英語による会話自体を避けようとする傾向がある。それでコミュニケーション不足に陥り、現地社員に余計な不安や不満を与えてしまう。重要なのは英語力ではなく、コミュニケーションを図ろうとする意欲です。特に現地のマネジメント層とは積極的にコミュニケーションを取る必要があります。