「ウォルト・ディズニー」は、713億ドル(約8兆円)で「21世紀フォックス」傘下で映画事業を営む「20世紀フォックス」を買収することが決定的となりました。7兆4000億円で買収交渉をしていた米ケーブルテレビ大手「コムキャスト」が手を引いた形。ディズニーはフォックスの強力なコンテンツ、『エイリアン』『X-MEN』『アバター』『猿の惑星』などのヒット映画を手にしたことになります。しかし今回の買収劇で中心的な役割を果たしているのは、実はインターネット動画配信の「Hulu(フールー)」。ディズニーが30%、フォックスが30%出資するHuluは、買収により実質的にディズニーの支配下に置かれることに。ディズニーは「Netflix(ネットフリックス)」で自社コンテンツを配信していますが、Huluの支配権とフォックスを得て、インターネット配信業界での覇権を狙っています。

フォックス
フォックスは「ウォーキング・デッド」などドラマシリーズにも注力


メディア事業が売上高全体の42%超の稼ぎ頭に成長

まずはディズニーのセグメント別売上高を見てみましょう。下の表は2017年9月期のものです。

セグメント別売上高割合
メディア・ネットワーク事業235億1000万ドル42%
テーマパーク・リゾート事業184億1500万ドル33%
映画事業83億7900万ドル15%
物販48億3300万ドル9%

決算書をもとに筆者作成

同社の収入はテーマパークや映画ではなく、メディア・ネットワーク事業に支えられています。メディア・ネットワーク事業は、自社が抱えるチャンネルなどの視聴料、宣伝費による売り上げが主体。特に番組の視聴料収入は莫大です。同社はディズニーチャンネルのほかに、ニュース番組に強い「ABC」、そして「ESPN」というスポーツチャンネルを持っています。パイプラインで原油を流し込むように、ディズニーはコンテンツを提供するテレビインフラを構築したのです。そこから資金を徴収できる仕組みを作ったことが、この会社の強みになっています。

しかしながら、安泰と見られていたスポーツチャンネル「ESPN」が曲者です。このチャンネルはアメリカンフットボール「NFL」、メジャーリーグベースボール、「FIFA」ワールドカップ、バスケットボール「NBA」など人気スポーツ番組の放映権を持っています。現在の契約世帯数はおよそ8500万。米国のテレビ所有世帯数はおよそ1億1500万世帯(米国コンテンツ市場調査)なので、70%以上が契約している計算。大変な数だと思いますが、2014年ごろには9500万の契約がありました。すなわち、ここ4年ほどで1000万もの契約を失っているのです。背景にはテレビからインターネットへ視聴する場所が変化したことがあります。

では、ディズニーの業績変化を見てみましょう。

※( )前年同期比

売上高営業利益
2017年9月期551億3700万ドル(1%減)147億7500万ドル(6%減)
2016年9月期556億3200万ドル(6%増)157億2100万ドル(19%増)
2015年9月期524億6500万ドル(7%増)131億7100万ドル(15%増)
2014年9月期488億1300万ドル114億3500万ドル

決算書をもとに筆者作成

2016年までは順調に伸びていましたが、2017年に入って鈍化しました。同社は2017年にESPNの従業員を150名解雇するなど、リストラを行っています。業績の立て直しに必死なのです。

先ほど見たように、ディズニー最大の敵はテレビインフラから外れる、インターネットの動画配信です。ディズニーのフォックス買収には、この動画配信に食指を伸ばす姿が見て取れます。動画配信メディアHuluです。今回の買収により、ディズニーの出資割合は60%となりました。インターネットの動画配信インフラの支配権を得たのです。