2018年4月30日、ソフトバンクグループ<9984>(以下、ソフトバンク)は、米国子会社であるSprint Corporation(以下、Sprint)と、T-Mobile US, Inc.(以下、T-Mobile)が、すべての対価を各社の株式とする合併取引を行うことについて合意したと発表した。これにより、ソフトバンクは合併後の新会社を通じてSprintの株式を間接的に保有することとなり、Sprintへの所有割合が83.02%から27.4%へ低下し、連結グループから外れて持分法適用会社へ移行することとなった。

5Gネットワークの迅速な展開や米国での雇用創出などが今回の合併の理由として謳われているが、実際は業績不振でお荷物となっていたSprintを早く連結から外したいというソフトバンク側の思いもあったのであろう。

「Debt  Push  Down」という手法を使い、課税所得を減額  

そんな今回の合併スキームは、税制面、法務面の便宜を図るため、少し変わったスキームとなっている。合併スキームについて、ソフトバンクのHP上で図を交えて説明されているが、改めて全体のスキームをまとめると、下図のようになる。

(参考:https://www.softbank.jp/corp/news/press/sb/2018/20180430_01/

そもそもSprintがStarburstとGalaxy(以下、Starburst)という会社に所有されており、ソフトバンクは直接Sprintを所有しているわけではないことを知らなかった方もいるであろう。これには理由があって、Debt Push Downという手法を使うためにわざと買収ビークル(StarburstとGalaxy)を設立し、当該買収ビークルがSprintを買収するスキームとしているのだ。

photo by Mike Mozart:スプリントの店舗

Debt Push Downというのは、日本国内の企業が海外の企業を買収する際によく用いられる手法であるが、これは買収時の借入資金に係る支払利息を被買収会社の所在している国内の企業が行うことで、被買収会社が生み出す利益と買収ビークルによる支払利息を通算し、課税所得を減額することができるというものだ。

米国の税法では、米国に所在する会社間でのみ連結納税を行うことができるため、Sprintから生じる利益と買収時の借入資金に係る支払利息を相殺してSprintの課税所得を減額しようと思った場合、米国に会社を設立して、その会社がSprintの買収を行うという形にしなければならなかったということだ(つまり、ソフトバンクで生じる支払利息は相殺対象とならない)。