中国企業のM&A戦略を紹介するシリーズ。今回は2011年に家電量販店のラオックスを傘下に収めた「蘇寧グループ」を取り上げる。蘇寧グループは2016年に、イタリアのプロサッカーリーグ、セリエAを代表する名門クラブで、「インテル」略称で知られるインテルナツィオナーレ・ミラノを買収した。

蘇寧グループの名称の由来は、当初本社のあった場所が江蘇省南京市の江「蘇」路と「寧」海路の間に位置していたためとされている。

蘇寧グループの持ち株会社の名称は、もともと、蘇寧「電器」グループだったが、2013年に蘇寧「雲商」グループへと変更された。その後、2018年にさらに見直され、蘇寧「易購」グループとなった。したがって、現在は蘇寧易購グループが正式名称となるが、本記事では略称として「蘇寧グループ」で統一することとしている。

顔認証システムを導入した無人店舗

中国の小売店では、現在、コンビニなどで無人化が進んでいるといわれるが、蘇寧グループは2017年から南京市や上海市で顔認証システムを導入した無人店舗を展開している。

多くの無人コンビニなどでは、スマートフォンでの決済が基本となっている。しかし、顔認証システムの店舗では事前にスマートフォンの決済サービスに登録をしておけば、店舗出口のカメラで顔認証をするだけで、自動的に決済ができる仕組みとなっている。

家電量販店の蘇寧電器

蘇寧グループは、1990年に江蘇省南京市で小売店として営業を始めた。当初は200平方メートルほどのエアコン専門店だった。1993年には、早くもエアコン専門店のトップに躍り出る。

その後、1996年頃になると、家電量販店「蘇寧電器」として、南京市以外の場所に店舗を展開するようになった。2002年には北京、上海、天津、重慶などの都市に出店し、ほぼ中国全土に進出する。2004年に深圳証券取引所に上場した。

ラオックスを子会社化

蘇寧グループは、2009年にラオックスと資本提携し株式の一部を取得した。さらに2011年、約90憶円の第三者割当増資を引き受け、持ち株比率を34.28%から65.3%に引き上げ、ラオックスを子会社化した。

これにより、ラオックスは蘇寧グループの傘下で、日本国内のみならず、中国での実店舗の展開、インターネット通販を行うことになった。2016年には、中国での実店舗からの撤退を発表したが、インターネット通販は強化を進め、引き続き、中国で事業を展開している。

 2009年に、蘇寧電器と日本観光免税株式会社の出資を受けたラオックスは、日本国内で中国人客の爆買いに助けられ、売上を伸ばしていった。2015年には、「爆買い」が流行語となり、ラオックスは「家電量販店」ではなく、「大手総合免税店」として扱われるようになる。

中国人観光客向け免税品が売上の大部分を占めていたラオックスだが、近年の業績は停滞気味で、今後は免税品以外の事業の売上を伸ばす計画である。そのため、近年では、婦人靴のモード・エ・ジャコモやギフト商品販売のシャディなどを子会社化している。

蘇寧グループの今後

蘇寧グループは2009年から、パイオニアの中国事業で薄型テレビのブランド貸与をしている。2011年には包括提携を行い、蘇寧電器で販売するパイオニアブランドの取扱製品数を増やし、デジタルカメラ市場にも参入した。

また、2011年には、蘇寧グループは三菱重工業とエアコン事業で提携し、中国で合弁会社を設立した。中国における三菱重工のエアコンの販売・アフターサービスなどを蘇寧グループが行っている。

近年では、蘇寧グループは、フォーチュン誌による「フォーチュン・グローバル500」の2018年版にランクインしており、2017年の売上高は約3兆9000憶円(2432億元)にのぼる。

文:M&A Online編集部