中国企業のM&A戦略を紹介するシリーズ。連載第5回は、インターネット関連大手のアリババ・グループ(Alibaba;阿里巴巴)を取り上げる。今年8月、アリババ・グループ傘下の出前アプリ「餓了麼(ウーラマ;Ele.me)」を手掛ける上海拉扎斯信息科技有限公司は、同業で百度(バイドゥ)傘下の「百度外売」を買収した。買収金額は、5‐8億米ドル(約544‐870億円)と推定されている。

爆発的に普及した出前アプリ

日本で名の知れた出前アプリといえば、「Uber EATS (ウーバーイーツ)」や「出前館」だろうか。中国の出前アプリは、2016年から爆発的に普及したと言われているが、普及の裏には、中国独自の文化があった。

中国では日本以上にデリバリー文化が深く根付いている。筆者が中国・上海に在住していた頃のことである。オフィスには、出前できるレストランのメニューが何枚も入ったファイルがあり、同僚と一緒に水餃子やお弁当などを電話で注文すると、オフィスビルの下まで配達してくれる。特に雨の日などは大人気で、ランチの時間帯になると、オフィスビルのロビーは配達業者で溢れていた。

〇中国の出前アプリ年間取引額と利用者数推移

出典:C-NET

「餓了麼」(ウーラマ)は中国語で「お腹減った?」

「餓了麼(ウーラマ;Ele.me)」を運営する上海拉扎斯信息科技有限公司は、インターネットや専用アプリで注文を受け、料理を配達するサービスを提供している。出前ビジネスの草分け的存在だ。創業者の張旭豪(ジャン・シューハオ)氏は、上海交通大学の大学院生だった2008年にウーラマを設立した。

「ウーラマ」というサイト名は、中国語で「お腹減った?」を意味する。張氏はこのサイト名を仲間との討論の末に決めたそうだ。創業当初は加盟店の確保や資金不足などに悩まされたが、ネット決済の普及に伴い、中国最大手のフードデリバリー会社に躍進した。

「餓了麼」(ウーラマ)

買収後、1年間は「百度外売」を独立運営

実は2016年頃、SNS大手のテンセント傘下の「美団外売(Midea Waimai)」と検索大手の百度傘下の「百度外売(Baidu Waimai)」が合併するという噂もあった。百度は「百度外売」を売りたがっていたが、「美団外売」との交渉が決裂。すぐにアリババ傘下のウーラマが百度と交渉を始め、今回の買収に至ったと言われている。

百度外売

三つ巴の戦いから2社の争いへ

買収前、中国の出前アプリ市場は、アリババ傘下の「ウーラマ」、テンセント傘下の「美団外売」、そして百度傘下の「百度外売」の三つ巴の戦いであった。買収後は、ウーラマと百度外売の統合で業界シェアは第1位となり、美団外売との2社の争いに変わった。

Analysis易観によると、2017年度第3四半期(2017年7月~9月)の中国出前アプリ業界の取引金額シェアは、以下の通りである。

1位ウーラマ+百度外売48.8%
2位美的外売43.1%
3位その他8.1%

(出典:Analysis易観 2017年度第3四半期より)http://baijiahao.baidu.com/

出典:Analysis易観

中国の出前サイト市場の今後

上海在住の日本人から聞いた話によると、最近では出前の他にもスターバックスのコーヒーや生鮮食品など、何でもすぐにデリバリーしてくれるので、本当に便利になったという。

2017年第3四半期のデリバリーサービス取引規模は582.7億人民元(約9,985億円)となり、2017年第2四半期と比べると成長率26.8%、前年同期と比べると79.1%の成長率を記録した。

今後も中国の出前サイト市場の成長と業界のシェア争いに注目していきたい。

文:M&A Online編集部