中国企業のM&A戦略について、日本企業以外の外国企業と関連する部分にスポットを当てて紹介する。今回は、近頃、持ち株会社であるジーリー・ホールディング・グループ(浙江吉利控股集団有限公司)が、マレーシアのプロトン・ホールディングスの株式の49.9%を取得すると発表し、プロトンが持つ英高級車ロータスの株式51%も譲り受けることを発表した、吉利汽車を取り上げる。

吉利汽車

吉利(ジーリー)汽車とは

吉利汽車は、中国で最大の民営自動車製造企業であり、持ち株会社のジーリー・ホールディング・グループを中心とするグループを形成している。グループ関連会社の「吉利控股集団」は、2004年から香港市場に上場している。

吉利汽車は1986年に設立され、当初は冷蔵庫部品の生産をしていた。後に、冷蔵庫や冷凍庫を生産するようになり、バイクの製造もするようになった。そして1997年、自動車業界に参入し、自動車の製造を開始する。

スウェーデン企業のボルボ・カーズを買収

2010年、ジーリー・ホールディング・グループは、アメリカのフォード・モーター傘下であったボルボ・カーズの買収を発表した。ボルボ・カーズの本拠地であるスウェーデンのヨーテボリで契約が交わされ、ジーリー側は100%の株式と知的財産を含む全資産を取得し 、買収額は約1,850億円約(約18億米ドル)だった。

経営不振に喘ぐボルボ・カーズをフォード・モーターから買収した形となり、その後、約1兆1,320億円(110億米ドル)を投じ、ボルボの立て直しに着手した。現在、吉利汽車とボルボのジョイント・ベンチャーは、中国の成都市と大慶市に工場を持っている。

VOLVO(日本語公式ウェブサイト)

世界一安全なファミリーカー「ボルボ」

誰もが知っている自動車ブランドのボルボだが、その歴史は古く、1924年にスウェーデンでの自動車製造の計画が始まり、1926年に自動車メーカーのボルボが誕生し、ボルボブランドの乗用車製造が開始されている。

ボルボは、「設計の基本は常に安全でなければならない」という理念のもと、安全装備の開発、事故調査の実施と設計へのフィードバックを行う企業方針があった。また、北欧メーカーであるためヘラジカとの衝突を開発段階から考慮していたことから、「世界一安全なファミリーカー」と評価されていた。

フォードから吉利汽車へ

1999年にボルボの乗用車部門がフォードに譲渡されると、ボルボ・カーズとして、フォード社のプレミアム・オートモーティブ・グループの一部門となった。フォードグループ共通のプラットフォームやエンジンを採用し、ボルボのアイデンティティである「安全設計」を守り続けた。

そして、2010年、フォードから吉利汽車にボルボ・カーズのすべての株主の権利が売却されると、ボルボは完全自社開発で次世代のエンジン・シャーシを新開発し、順次採用している。

吉利汽車傘下のボルボの今後

吉利汽車は早ければ2018年にも、ボルボのアメリカへの輸出を開始すると発表した。吉利汽車は、ボルボ買収後、ボルボの立て直しに着手してきた。エンジニアリングに関するボルボのノウハウを手に入れた吉利汽車が買収後に発表したモデルは、概して好評を博していると伝えられている。

吉利汽車とボルボのジョイント・ベンチャーが運営する中国工場で、アメリカ向けの製品も生産される予定である。中国で生産されたボルボのアメリカ輸出は、2018年の末から始動すると伝えられている。

ボルボの中国での売上は、高級車市場の盛り上がりを受けて堅調と言われている。中国はボルボにとって世界最大の市場となっており、売上規模でアメリカを突破した。

吉利汽車は長年のボルボへの投資が、中国で成果を表しはじめたこのタイミングで、アメリカへの再進出を決定した。アメリカの消費者にも馴染み深いボルボのブランド力を利用し、吉利汽車はアメリカ市場に挑戦すると言われている。

また、2017年8月にはボルボが大手自動車メーカーとして初めて、2019年以降に発売する全ての車をEVやハイブリッド車などにすると発表している。今後も、吉利汽車傘下のボルボに注目していきたい。

(参考)ボルボ日本のプレスリリースはこちら

文:M&A Online編集部