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本体は下方修正、「金の卵」キオクシアは赤字 どうなる東芝再建?
まとまりかけていた東芝の再建案に再び「黄信号」だ。同社は2023年3月期連結業績予想で、営業利益を前期比40.2%減の950億円に下方修正した。日本産業パートナーズによる買収は大詰めを迎えているが、業績の下方修正で再び混乱する可能性がある。
東芝<6502>が日本産業パートナーズ(JIP)連合による買収提案を受け入れ、上場廃止することを取締役会で決議した。7月下旬頃に株式公開買い付け(TOB)を実施する。TOB価格は1株4620円で、買収額は2兆円となる。果たして、この価格でTOBは成立するのだろうか?
TOBの成否を大きく左右するのは公募価格だ。一般的にTOBの公募価格は、発表直前の株価に「プレミアム」と呼ばれる金額を上乗せする。TOB価格の方が安ければ、株式市場で売却した方が得だからだ。
例外は経営危機に陥った上場企業のTOBで、2022年2月に発表された佐渡汽船のTOB価格は発表前営業日の202円を大きく下回る30円だった。こうした場合は「プレミアム」ではなく「ディスカウント」と呼ぶ。
2022年にTOBは59件あり、総プレミアム平均は43.02%、ディスカウントTOBを除くポジティブプレミアム平均は47.63%だった。
東芝の場合、TOB受け入れを決議した3月23日の終値は4213円で、公募価格の4620円のプレミアムは9.66%で、昨年のプレミアム平均を大きく下回る。昨年のプレミアム平均を「適正価格」とすれば、東芝のTOB価格は6025〜6220円が妥当となる。
もっともTOB価格は「プレミアムありき」で決まるわけではない。市場株価平均法、類似会社比較法、事業計画書からその会社が将来どれくらいの利益(フリーキャッシュフロー)を得るか計算し、将来の不確定性やリスクを「割引率」として考慮したうえで計算式から企業価値を求めるDCF(ディスカウントキャッシュフロー)法などの算定基準がある。
これが、M&A(企業の合併・買収)とM&Aにまつわる身近な情報をM&Aの専門家だけでなく、広く一般の方々にも提供するメディア、M&A Onlineのメッセージです。私たちに大切なことは、M&Aに対する正しい知識と判断基準を持つことだと考えています。M&A Onlineは、広くM&Aの情報を収集・発信しながら、日本の産業がM&Aによって力強さを増していく姿を、読者の皆様と一緒にしっかりと見届けていきたいと考えています。
まとまりかけていた東芝の再建案に再び「黄信号」だ。同社は2023年3月期連結業績予想で、営業利益を前期比40.2%減の950億円に下方修正した。日本産業パートナーズによる買収は大詰めを迎えているが、業績の下方修正で再び混乱する可能性がある。