日鉄訴訟は「サプライヤーが折れるはず」と甘くみたトヨタの失敗

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トヨタは状況を読み誤った(Photo By Reuters)

「サプライヤーの反乱」なのか?トヨタ自動車<7203>が日本製鉄<5401>からハイブリッド車(HV)などの電気モーター部品に使われる無方向性電磁鋼板の特許権を侵害したとして、素材を供給した中国鉄鋼大手の宝山鋼鉄と共に東京地裁に訴えられた。根底にあるのはトヨタ側の「変わらなかった意識」の問題だ。

トヨタの「門前払い」にキレた日本製鉄

訴状では200億円の損害賠償請求に加え、同鋼板を利用した自動車の生産・販売を差し止めを求める厳しい内容で、トヨタ側にも衝撃が広がっている。両社とも現時点ではニュースリリースを出しただけで、詳細な事情は分からない。ただ、ニュースリリースだけでも、訴訟に至った状況を理解するには十分だ。

先ずは訴えた日鉄のニュースリリースを見てみよう。「当社は、自動車の電動化に必要不可欠な無方向性電磁鋼板に関する当社特許を、宝鋼およびトヨタ自動車が侵害していると判断したため、それぞれと協議を行なってまいりましたが、問題の解決に至ることが出来ませんでした。当社は、法的措置を講じ、当社の知的財産権の保護を図ってまいります」とある。

日鉄のプレスリリース。トヨタに対する請求の方が多いことが分かる(同社ホームページより)

同プレスリリースからは、日鉄がトヨタに対しても電磁鋼板の特許権についての協議を実施したが、解決できなかったことが見て取れる。では、何が問題解決のネックとなったのか。トヨタのニュースリリースを読めば、その「ネック」は一目瞭然だ。トヨタのニュースリリースを見てみよう。

「日本製鉄株式会社による電磁鋼板に関する特許に関する提訴提起につきましては、弊社としては、本来、材料メーカー同士で協議すべき事案であると認識しており、弊社が訴えられたことについては、大変遺憾に感じております」とある。すなわち「トヨタを訴えるのはお門違いも甚だしい。問題解決したいなら宝山鋼鉄と話し合え」という、事実上の「門前払い」宣言だ。

実際の交渉でも同様の態度を取ったのは想像に難くない。だから日鉄は「話し合いができないのなら、法廷で争うしかない」と、大口取引先にもかかわらずトヨタを訴えたのだろう。

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