明治ホールディングス<2269>傘下のKMバイオロジクス(熊本市)が、塩野義製薬<4507>から2日遅れの2021年10月22日に新型コロナワクチンの第2/3相臨床試験を始めた。
第一三共<4568>も11月に第2/3相臨床試験を始める予定で、新型コロナの国産ワクチンの一番乗りは、この3社に絞られそうだ。
各社の計画を見ると、塩野義は12月までに、第3相臨床試験を始め、2022年3月までに実用化を目指すとしており、計画通りであれば塩野義が一番乗りとなる。
KMバイオロジクスは第3相臨床試験の開始時期を公表していないが、実用化の時期については2023年3月までとしており、塩野義から1年遅れとなる。
第一三共は、2022年3月までに第3相臨床試験を始め、2022年12月までに実用化を目指すとしており、KMバイオロジクスより3カ月早く、塩野義からは9カ月遅れとなる。
塩野義は2021年8月に第1/2相臨床試験を始め、2カ月ほどで第2/3相臨床試験に進んだ。第3相臨床試験についても2カ月ほどで移行できる計算だ。
KMバイオロジクスが第1/2相臨床試験を始めたのは2021年3月で、第2/3相臨床試験に進むのに7カ月ほどかかった。第一三共も2021年3月に第1/2相臨床試験を始め、8カ月ほどかけて次の段階にたどり着く見込みだ。
こうした差が今後生まれないとは言い切れず、計画通り進むのか予想は難しい。もちろん効果や安全性などに問題があれば、計画を見直さざるを得ないわけで、これまでは明らかになっていないが、何10万人に一人といったような副反応が見つかれば、計画の遅延につながる。
事実、英製薬大手のアストラゼネカが、深刻な副反応の可能性が浮上したことから、2020年9月から2カ月近く臨床試験を中断したことがあった。
データ捏造などの不祥事が発覚するたびに、日本企業に対する信頼が揺らぐが、それでもやはり、食品などを中心に国産品に対する安心感は高く、根強い需要がある。
KMバイオロジクスのワクチンは、インフルエンザワクチンなどで長年の使用実績がある不活化ワクチンで、安全性が高く、副反応に不安を抱いている人にとっては、安心な国産品となる。
塩野義製薬のワクチンも昆虫細胞などを用いる遺伝子組み換えたんぱくワクチンで、すでにインフルエンザワクチンなどで実用化されており、こちらも安全性は高いという。
第一三共のワクチンは、すでに接種が進んでいるモデルナやファイザーと同じmRNA(メッセンジャーRNA)ワクチンだ。
効果が高く、安全なワクチンを先駆けて開発できた一番乗り企業は、敬意を込めて長く日本人の記憶に刻まれることなりそうだ。果たしてその栄誉を掴むのはどこなのか。
【国産ワクチンの開発状況】
第1/2相臨床試験開始 | 第2/3相臨床試験開始 | 第3相臨床試験開始 | 実用化の時期 | |
塩野義製薬 | 2021年8月 | 2021年10月20日 | 2021年12月まで | 2022年3月まで |
KMバイオロジクス | 2021年3月 | 2021年10月22日 | 未公表 | 2023年3月まで |
第一三共 | 2021年3月 | 2021年11月予定 | 2022年3月まで | 2022年12月まで |
文:M&A Online編集部
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