ENEOS、「脱炭素」で「ゴールドマン・サックス」と急接近

alt
ENEOSホールディングスの本社(東京・大手町)

ENEOSホールディングスがM&Aで買い手と売り手を巧みに演じている。再生可能エネルギー発電の国内大手を約2000億円で買収する一方、上場子会社の非公開化で同額に近い資金を捻出する。一連の巨額取引を読み解くキーワードは「GS」と「脱炭素」だ。

NIPPO非公開化へ“巧妙”スキーム

米金融大手のゴールドマン・サックス、略してGS。ENEOSホールディングスは10月11日、GS傘下で太陽光発電など再生可能エネルギー発電のジャパン・リニューアブル・エナジー(JRE、東京都港区)の全株式を取得し、2022年1月末をめどに子会社化すると発表した。取得金額は2000億円規模で、ENEOSとして過去最大級の企業買収となる。

この約1カ月前の9月7日。ENEOSは上場子会社で道路舗装最大手のNIPPOに対してTOB(株式公開買い付け)を行い、非公開化する計画を発表した。TOBは11月中旬までに始まる見通しだが、タッグを組んだ相手は他でもないGSだ。

GSが提案したNIPPOの非公開化スキームは実にトリッキー(巧妙)と言わざるを得ない。

ENEOSはNIPPO株を約57%保有。GSは特別目的会社を通じて残る約43%の株式をTOBで買い付ける。TOB成立後、ENEOSは全保有株をNIPPOに売却(NIPPOによる自己株式取得)する。さらにNIPPOを完全子会社化した特別目的会社に対し、ENEOSは50%超出資することで、間接的ながら親会社の地位を維持する。これら一連の取引でENEOSはざっと1700億円を手にする計算で、JRE買収の原資になるとみられる。

コーポレートガバナンス(企業統治)上、問題が多いとされる親子上場の解消には本来、ENEOSが直接NIPPOを完全子会社化する選択肢が考えられるが、自ら2000億円程度を資金投入する必要がある。これに対し、親子上場の解消と成長分野への投資資金の獲得を両立できるのが今回のスキームというわけだ。

株式の非公開化が予定されるNIPPO(東京・京橋の本社前)

「脱炭素」と「出口戦略」で思惑一致

ENEOSは現中期経営計画の最終年度である2022年度末までに国内外の再エネ事業の発電容量を100万キロワット超に拡大することを目標に掲げる。EV(電気自動車)の普及に象徴されるように、「脱炭素」が世界の潮流となる中で、石油に依存した事業構造からの転換が待ったなしの状況にある。

ENEOSが傘下に収めるJREは2012年に設立し、GSが75%、シンガポール政府投資公社が25%の株式を持つ。全国50カ所近くで太陽光発電を中心に陸上風力発電、バイオマス発電を展開し、運転中の再エネ発電容量は約38万キロワットで、建設中を含めると約71万キロワットに達する。すでに台湾に進出しているほか、今後、洋上風力発電なども予定している。

GSとしても投資先のJREをできるだけ高値で売却したいのは山々。脱炭素の取り組みを加速したいENEOSと、かねて出口(投資回収)戦略を模索するGSの思惑が一致したようだ。

もう一方の当事者のNIPPOは来春に1949年以来の東証1部上場に別れを告げたうえで、GSの主導で海外事業、不動産事業などの成長戦略を推し進め、将来の再上場を期すことになる。

文:M&A Online編集部

M&A Online編集部

M&Aをもっと身近に。

これが、M&A(企業の合併・買収)とM&Aにまつわる身近な情報をM&Aの専門家だけでなく、広く一般の方々にも提供するメディア、M&A Onlineのメッセージです。私たちに大切なことは、M&Aに対する正しい知識と判断基準を持つことだと考えています。M&A Onlineは、広くM&Aの情報を収集・発信しながら、日本の産業がM&Aによって力強さを増していく姿を、読者の皆様と一緒にしっかりと見届けていきたいと考えています。


NEXT STORY

「成長戦略型段階的M&A」|編集部おすすめの1冊

「成長戦略型段階的M&A」|編集部おすすめの1冊

2021/10/11

M&A Online編集部が取り上げる今週のおすすめの1冊は「成長戦略型段階的M&A」(幻冬舎刊)。著者の畑野幸治さんは連続起業家として知られ、M&Aによる成功体験を持つ。現在、M&A仲介のfundbook(東京都港区)を率いる。

関連のM&Aニュース