余った保険料はチャリティー団体に寄付

保険会社の契約者には「保険会社は保険金の支払いを損失と考え、なんだかんだ理由をつけて支払額を低く抑えようとする」との不満があった。そこでレモネードは保険料の20%のみを受け取り、残り80%の未請求分は利益として留保せずにチャリティー団体へ寄付する。つまり保険支払いを渋っても、レモネードの利益にならない構造にした。

保険会社は「保険支払い総額が、プールした保険料を上回った場合に備えて内部留保が必要」と主張している。レモネードでそのようなケースになった場合は、再保険会社から支払われる仕組み。契約者は保険会社の出し惜しみを懸念する必要がなくなると同時に、チャリティーで社会に貢献できるという充足感を得られる。

この保険モデルは経済行動学の「ソーシャルインシュランス」理論に基づく。保険会社の出し惜しみを懸念する契約者は粉飾請求で手取り額を確保しようとするが、その懸念がなければ正直に請求する傾向があるという。

粉飾請求防止のための手間暇(てまひま)を考えると、支払わなかった保険金を寄付したほうが結果的に低コストで済むという。もちろんレモネードでも虚偽申請や保険金詐欺を防止する18種類のアルゴリズムをAIに実装している。

レモネードは2019年4月11日にソフトバンクグループ主導で3億ドル(約335億円=当時)を調達していた。米国のほか欧州の一部でも保険販売を展開しており、2019年12月期の売上高は前期比約3倍の6730万ドル(約72億円)だったが、保険販売コストがかさんだため最終赤字は同2倍の1億850 万ドル(約116億円)に膨らんでいる。

ただ、上場により同社の時価総額は前年4月の21億ドル(約2250億円)から38億ドル(約4000億円)に跳ね上がった。レモネードはスタートアップ支援で災難が続くソフトバンクグループの救世主になれるだろうか?

文:M&A Online編集部