希望(早期)退職者を募集する上場企業が増え続けている。2020年1~3月に計画を発表した企業は14社を数え、前年同期(8社)に比べほぼ倍増した。業種では製造業が半数を占める。新型コロナウイルスの感染拡大に伴うインバウンド(訪日観光客)の激減が引き金となったケースも2社ある。

コロナ・ショックによる世界的に経済活動の低下で企業業績が悪化に向かう中、今後、雇用を守り切れずに希望退職者募集の動きが加速する可能性もある。

インバウンド激減がラオックス、HANATOURを直撃

電子部品大手の日本ケミコンは年度末も押し迫った3月30日、100人程度の希望退職者を募集すると発表した。45歳以上60歳未満の正社員・有期契約社員を対象とし、4月10日~30日に募集する。退職日は5月31日。所定の退職金に特別加算金を上乗せする。

同社は主力のアルミ電解コンデンサーで国内首位。米中貿易摩擦や英国のEU(欧州連合)離脱などに伴う市場環境の変化に対応し、国内生産体制の再編や海外生産強化を進めてきたが、抜本的な改善が必要と判断し、希望退職者の募集に踏み切る。募集人員は単体従業員の約1割にあたる。

今年に入り、希望退職者募集の計画を発表した企業は1月5社、2月6社、3月3社で推移し、合計14社に上る(表参照)。直近の2019年10~12月期(13社)と比べても増勢を保っている。

新型コロナウイルスの影響をもろに受けたのは免税店大手のラオックス、インバウンド専門旅行会社のHANATOUR JAPANだ。

主要顧客の中国人観光客が途絶えたラオックスは子会社を含めて160人程度の希望退職者を募集した(応募は111人)。さらに同社は北海道や沖縄などの店舗を閉店した。一方、HANATOURは昨年来、メーンの韓国人観光客が日韓関係悪化で落ち込んでいたところに、新型コロナの影響が加わり、3月下旬に30人程度の募集を余儀なくされた。31日には、貸切観光バスを運行する子会社の友愛観光バス(大阪府八尾市)の事業休止を発表した。

訪日観光客が激減…ラオックス(東京・銀座)

新生「芝浦機械」は200~300人規模で募集

募集人員が最も多いのが芝浦機械(東芝機械から4月1日付で社名変更)。本体と子会社の社員全員を対象に200~300人規模を予定。同社は東芝グループからの離脱に伴い、将来を見据えた構造改革や設備投資を積極化しており、その一環と位置づける。

NISSHAは250人程度、シチズン時計、三井E&Sホールディングス(旧三井造船)は200人程度を計画。NISSHAが希望退職者を募集するのは2011年(490人応募)以来9年ぶりで、17年に社名を日本写真印刷から変更して初めてとなる。三井E&Sは千葉工場での造船事業撤退に伴う措置。

経営再建中の曙ブレーキ工業は2月下旬から200人を約1カ月間募集したが、応募は154人で、予定数に届かなかった。予定数100人程度に対し138人が応募した片倉工業では、組織・人員の見直しと働き方改革の推進で一人ひとりの生産性を上げるとしている。

サッポロホールディングスは中核子会社のサッポロビールで計画中の第1期募集期間について5月1日~7月10日に当初予定より1カ月ずらした。新型コロナの影響で適用対象者に十分な説明時間を確保することが困難になったため、としている。

約4600人の希望退職者がすでに確定

昨年末までに希望退職の計画を発表したうえで、今年1~3月に募集を終えた企業は味の素、LIXILグループ、ファミリーマートなど6社あり、その応募総数は2903人。1~3月に計画を発表した14社の募集人数は約1700人(実施済みを含む)。合計すると、今年に入ってすでに約4600人の希望退職者の発生が確定したことになり、昨年1年間のほぼ半数に相当する。

◎希望退職者募集を発表した企業(HDはホールディングス)

発表社名募集内容と結果
3月 東海染工 20人程度(3月9日~16日)→14人応募
HANATOUR JAPAN 30人程度(3月24日~30日)→?
日本ケミコン 100人程度(4月10日~30日)
2月 芝浦機械 200~300人規模(3月中旬~4月初旬)
シチズン時計 200人程度(対象企業はシチズン電子、シチズン電子タイメル)
サッポロHD 定めず(5月1日~7月10日、10月1日~12月10日)
ラオックス 160人程度(2月17日~3月6日)→111人応募
NISSHA 250人程度(4月28日~5月15日)
三井E&Sホールディングス 200人(6月1日~15日、千葉工場での造船事業終了に伴う)
1月 ジオマテック 40人(2月3日~3月2日)→?
リョーサン 80人程度(2月3日~14日)→?
曙ブレーキ工業 200人(2月24日~3月23日)→154人応募
片倉工業 100人程度(3月9日~19日)→138人応募
佐鳥電機 60人程度(3月16日~31日)→?
     
  <2019年10月~>   青字は募集時期が2020年
12月 オンワードHD 350人程度(20年1月7日~30日)→413人応募
ダイドーグループHD 50人程度(20年1月10日~24日)→35人応募
三越伊勢丹HD 新潟三越伊勢丹(2020年3月閉店)で実施済み(内容は非公表)
11月 日本電波工業 約100人(11月25日~12月24日)→129人応募
オンキヨ― 約100人(12月12日~20日)→98人応募
ファミリーマート 約800人(20年2月3日~7日)→1025人退職
LIXILグループ 定めず(20年2月17日~28日)→497人応募
ノーリツ 約600人(20年1月17日~31日)→789人応募
味の素 100人程度(20年1月6日~3月13日)→144人応募
10月
サンデンHD 200人程度(10月25日~11月8日)→215人応募
スペースシャワーネットワーク 15人程度(12月2日~18日)→22人応募
日立金属 2020年3月末退職で実施予定
FDK 250人程度(12月10日~17日)→183人応募

文:M&A Online編集部