米欧の有力衣料品ブランドの経営破たんが相次いでいる。この1年で、昨年8月の米バーニーズ・ニューヨークに始まり、今年7月の米ブルックス・ブラザーズまで5社を数える。英ローラアシュレイのように、日本再上陸を進める最中に行き詰まったところもある。
ブルックス・ブラザーズは米衣料品界の名門中の名門。1818年にニューヨークで創業し、アメリカントラディショナルと呼ばれる伝統的スタイルを確立した。トラッドの必須アイテムのボタンダウンシャツを最初に世に送り出したことでも知られる。
その同社が連邦破産法11条(日本の民事再生法に相当)を適用申請し、事実上経営破たんしたのは7月8日。オフィスウエアのカジュアル化で主力のスーツ系が苦戦していたうえ、ネット通販との競争が激化していたところに、新型コロナ感染による店舗休業がダメを押す形となった。負債総額は少なくとも5億ドル(約534億円)を超えるという。
日本では1979年にダイドーリミテッドと共同で日本法人を設立し、約80店舗を展開する。国内では不採算の10店舗を8月末までに閉鎖するが、一方で9月初めに新旗艦店の「表参道店」(東京都港区)を出店する。今後、米本社と切り離し、日本法人を運営するものとみられる。
新型コロナ感染が世界的に深刻化する中、3月に英生活雑貨・衣料のローラアシュレイ、5月にはカジュアル衣料品チェーンの米Jクルーがそれぞれ経営破たんした。
ローラアシュレイの日本での取り扱いは2018年までイオングループが手がけ、最盛期は100店舗を超えていたが、販売低迷もあって契約満了に伴い事業を終了した。代わって、伊藤忠商事がライセンスを取得。ワールドと組んで今年8月にも国内店舗を出店する予定だったが、現時点で計画は宙に浮いたまま。
Jクルーも以前は伊藤忠、レナウンとライセンス契約して10年以上日本国内で店舗展開していたが、2008年に撤退していた。
米本社は昨年8月に経営破たんに追い込まれたものの、高級衣料品専門店のバーニーズ・ニューヨークの日本法人は強固な基盤を持つ。バーニーズの日本上陸は1980年代。元々は伊勢丹系列だったが、曲折を経て、現在はセブン&アイ・ホールディングスの100%子会社。日本では12店舗(アウトレット6店舗を含む)を展開する。
バーニーズといえば、「ユニクロ」を展開するファーストリテイリングがかつて買収に乗り出したことが思い出される。最終的には、ドバイ政府系の投資ファンドが1000億円超の高値でバーニーズを手に入れたが、仮にユニクロ傘下に入っていたならば、その後、違う展開が待っていたはずだ。
そして昨年9月にはファストファッション大手の米フォーエバー21が破たんした。日本にあった14店舗は閉鎖を余儀なくされた。
話は戻るが、日本においてトラッドの分野でブルックス・ブラザーズと人気を二分するブランドといえば、Jプレスといって差し支えないだろう。Jプレスは1980年代から、国内アパレル最大手のオンワードホールディングス(HD)が取り扱っている。
コロナ感染の影響下、日本でもアパレル大手の業績は一段と悪化している。オンワードHD、TSIホールディングス、三陽商会の3~5月期決算はそろって最終赤字に沈み、老舗のレナウンは5月に民事再生手続きを開始した。
多様化する衣料品ニーズやインターネット販売の台頭などを背景に、日米欧ともにアパレル受難の時代を迎えて久しいが、コロナ禍が経営の新たな重しになっている。
文:M&A Online編集部
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