内紛に端を発する定食大手、大戸屋ホールディングスをめぐる攻防戦は6月25日に最大のヤマ場を迎える。同日開かれる大戸屋の定時株主総会で、会社側、筆頭株主のコロワイドの双方が取締役案の賛否を諮る。経営陣の刷新を求める株主提案を行うコロワイドは取締役の半数以上を派遣し、大戸屋の子会社化を視野に入れているが、大戸屋は猛反発している。

両陣営は株主総会に向け、激しい委任状争奪戦を展開。今年の場合、新型コロナ感染の影響下、株主には出席見合わせを要請している特有の事情もあり、勧誘合戦はこれまでになくヒートアップした。

取締役選任をめぐり、「委任状」争奪

コロワイドは外食総合大手。居酒屋「甘太郎」「北海道」などで知られ、傘下には「牛角」のレインズインターナショナル、「かっぱ寿司」のカッパ・クリエイト、「ステーキ宮」のアトムといった上場子企業を抱える。大戸屋株式については19.1%を保有する。

大戸屋の定時株主総会における議案は3つで、いずれも役員人事に関するもの。第1号議案(取締役11人選任)、第2号議案(監査役2人選任)が会社提案で、第3号議案(取締役12人選任)がコロワイドによる株主提案。

株主提案の取締役候補12人の筆頭はコロワイド社長の蔵人賢樹氏。大戸屋の窪田健一社長ら現取締役5氏(会社提案と重複)も含まれるが、取締役会はコロワイド側が多数を占める構成となる。株主提案の中に名を連ねる三森智仁氏は、大戸屋創業者の三森久実氏(故人)の子息だが、現経営陣と対立関係にある。

株主総会の招集通知には通常、議決権行使書が添えられ、出席しない株主は書面で議案への賛否の意思を表明できる。今回はこれに加えて委任状(議決権行使とミシン目でつながっている)が同封された。

会社側は議決権行使書は未記入のまま、委任状は第1号議案と第2号議案に「賛」、第3号議案に「否」を記入して署名・押印のうえ返送するよう要請した。株主総会招集通知とは別に、後日、「大戸屋の『素材』と『店内調理』のこだわりへのご支持のお願い」と題してハガキによる委任状の勧誘も行った。

一方、コロワイドは株主宛てに「議決権行使に関するお願い」を発送。会社側の委任状は返送せず、破棄して、議決権行使書は第3号議案に「賛」、第1号議案と第2号議案に「否」を記入するよう求めた。株主への電話攻勢にも出る熱の入れようだ。

議決権行使に関する書面(左が大戸屋ホールディングス、右がコロワイドが発送したもの)

大戸屋、2020年3月期に赤字転落

コロワイドが大戸屋に株主提案を突き付けたのは4月半ば。経営陣を刷新し、食材の仕込み・加工を工場で一括集中するセントラルキッチン方式の導入などで、大戸屋の業績立て直しを目指すという内容だ。店内調理をセールスポイントにする大戸屋は「セントラルキッチンの活用ありきで、当社の企業価値の源泉を損なうもの」などとして提案を拒んだ。

ただ、当の大戸屋の2020年3月期の業績は売上高4.5%減の245億円、営業赤字6億4800万円(前期は4億1400万円の黒字)、最終赤字11億4700万円(同5500万円の黒字)。終盤にコロナ禍に見舞われたとはいえ、経営悪化は深刻だ。

今回のコロワイドとの騒動も、もとをただせば、2015年7月に大戸屋創業者の三森久実氏が急逝し、その子息の智仁氏(当時常務)の処遇などをめぐり、創業家と経営陣が対立したことにさかのぼる。曲折を経て昨年10月、創業家が保有する株式が渡った先がコロワイドだったのだ。

M&Aで業容拡大してきたコロワイド

積極的なM&Aで業容を拡大してきたコロワイドにしてみれば、国内約350店舗を展開する大戸屋は格好の“好餌”と映ったに違いない。しかも、本格的な定食業態はグループとしても初めてとなる。

劇場化した感のある大戸屋・コロワイドの攻防戦。どちらに軍配があがるのか。大戸屋が勝利すれば、究極の買収防衛策として非公開化という選択肢も場合によってはあり得る。コロワイドは敗れたとしても、あくまで子会社化を目指すのであれば、TOB(株式公開買い付け)の道が残されている。

文:M&A Online編集部