経営再建中のRIZAP(ライザップ)グループがフリーペーパー発行のジャスダック上場子会社「ぱど」を個人投資家の畑野幸治氏に売却することを決めた。畑野氏が行うTOB株式公開買い付け)に応募して保有株式72.56%のすべてを譲渡する。グループ傘下の会社・事業の売却は昨年10月に構造改革に着手して以来4件目だが、9社を数える上場子会社では初めてとなる。今期(2020年3月期)の黒字復帰を確かなものにできるのか。

M&A仲介会社経営の畑野氏に24億円で譲渡

ぱどは、無料宅配情報紙「ぱど」を全国180エリア、約1000万部を発行するフリーペーパー最大手。だが、紙離れやインターネット広告との価格競争などが業績を直撃し、赤字体質が定着。2017年にRIZAPの傘下に入った。19年3月期は売上高79億円、最終赤字5億2300万円だった。

ぱど株式の買付価格は1株170円。11月5日のTOB公表前日の終値213円を約20%下回る。通常は買付価格に20~30%のプレミアムが上乗せされるが、今回のTOBはRIZAPからの応募のみを前提にしているため、ディスカウントの形だ。RIZAPは全保有株式を売却し、約24億6700万円を受け取る。元の買収金額などを差し引いて、約10億円の売却益を見込む。

ぱどは1987年に荏原製作所(現荏原)、凸版印刷などが出資して設立。1992年にMBO(経営陣による買収)で独立し、2001年にジャスダックに上場した。RIZAPはグループで扱う商品やサービスの広告・販促活動を目的に同社を買収したが、わずか2年で見切りをつけた格好だ。

ここで気になるのは新たな買収者となった畑野氏。どんな人物なのか。

現在、M&A仲介を手がけるFUNDBOOK(東京都港区)の代表取締役CEO。大学在学中の2003年にインターネット広告会社を創業。11年に衣類やブランド品などの買取・販売(リユース)を手がけるBuySell Technologies(東京都新宿区)を設立し、約5年で年商100億円の企業に育てた。17年に同社の全株式を約50億円で譲渡した後、FUNDBOOKを設立した。個人として投資事業も行っている。

TOBは7日に始まった。畑野氏はTOB成立後、ぱどの取締役に就任する予定。2020年1月中に臨時株主総会が開かれる。ジャスダック上場は維持する。

ぱど本社が入るビル(東京・紀尾井町)

M&A凍結、赤字事業を相次ぎ売却

RIZAPは積極的な企業買収で事業の多角化と拡大を進めてきたが、買収した企業の業績不振などで2019年3月期は193億円の最終赤字(18年3月期は92億円の黒字)に転落。成長の牽引役だったM&Aを凍結し、本業のフィットネスクラブとの関連性や相乗効果が乏しい事業の売却や縮小に取り組んでいる。

RIZAPは業績不振の企業を純資産より割安な価格で買収してきた。同社が採用する国際会計基準(IFRS)では純資産と買収額の差額を「負ののれん」として利益計上できることから、利益を押し上げるメリットがあった。半面、子会社化した企業が早期に赤字から脱却できないと、連結業績の足を引っ張るリスクがあったが、それが現実となった。

実際、買収した上場子会社9社中、2019年3月期に最終黒字だったのはインテリア雑貨・用品のイデアインターナショナル(13年に買収)とカジュアル専門店のジーンズメイト(17年に買収)の2社だけ。

RIZAPが事業構造改革に着手して1年。第一弾として昨年12月、上場子会社のSDエンターテインメント(14年に買収)はゲームセンターやボウリング場、映画館などの事業を売却し、成長が見込める健康事業に経営の軸足を移した。

続いて今年1月にヘアケア・ボディケア用品のジャパンゲートウェイ(東京都新宿区、17年に買収)を投資会社に売却。5月にはタツミプランニング(横浜市、16年に買収)の戸建住宅・リフォーム事業を分割譲渡した。

とくに“出血”の度合いが大きく問題視されていたのが非上場子会社でジャパンゲートウェイ、タツミプランニング、サンケイリビング新聞社、上場子会社でワンダーコーポレーション、ぱどの5社だ。このうち、今回のぱどを含めて3社がすでに売却対象となった。

注目されるサンケイリビングの帰趨

ゲームソフトのワンダーコーポレーションとフリーペーパー発行のサンケイリビング新聞社が残るが、いずれも2018年にRIZAP傘下に入り、業績立て直しの緒についたところ。ただ、サンケイリビングは、ぱどとのスケールメリットを生かした競争力向上を目指した買収だっただけに、ぱど売却を受けて、その帰趨がにわかに注目される。

RIZAPの2020年3月期予想は売上高1.1%増の2250億円、営業利益32億円(前期93億円の赤字)、最終利益5億円(同193億円の赤字)。14日に発表する中間決算では通期予想が上振れるのか、それとも下振れるのか、事業構造改革の進捗が問われることになる。

◎上場子会社の顔ぶれ

買収年社名業務内容
2013イデアインターナショナルインテリア雑貨、旅行用品
2014SDエンターテイメントエンタメ事業売却、健康事業に集中
2015夢展望衣料品ネット販売
2016HAPiNSインテリア・生活雑貨
MRKホールディングス体型補正下着
2017ジーンズメイトジーンズなどカジュアル専門店
ぱどフリーペーパー、TOBで売却へ
堀田丸正和装・洋装、寝装
2018ワンダーコーポレーションゲームソフト、CD、文具など

文:M&A Online編集部