日本郵政<6178>が運営する「かんぽの宿」は、小樽(北海道小樽市)、酒田(山形県酒田市)、竹原(広島県竹原市)の3施設の営業終了を決めました。将来的な収益改善が見込めず、施設が老朽化しているため。

同社は2019年5月に、箱根(神奈川県箱根町)や郡山(群馬県郡山市)など、12施設の閉鎖、譲渡を決定していました。今回の3施設を追加すると、かんぽの宿は休館中のものを含めて53施設から38に縮小します。今後も残る施設の閉鎖、譲渡を進める意向です。

かつて、かんぽの宿はオリックスグループへ109億円で一括売却する計画がありましたが、バルクセールの妥当性の是非を問われて撤回した過去があります。「タダ同然で売るのではなく、一円でも高く」の姿勢を求められたかんぽの宿は今、資産価値向上を図ることができずに次々と閉鎖を決めています。

宿泊事業は37億5700万円の営業損失を計上

かんぽの宿小樽
小樽運河(Photo by PAKUTASO)

日本郵政の2019年3月期の宿泊事業は売上高が239億4100万円(前期比25億7300万円減)、営業損失が37億5700万円(前期は29億7600万円の赤字)でした。赤字幅は拡大しています。

かんぽの宿の弱点は3つあります。客室数が少ないこと、客単価が低いこと、そして従業員の給与が高いことです。会計検査院が実施した調査によると、かんぽの宿と中規模旅館の平均値比較は以下の通りです。

▼かんぽの宿と中規模旅館の比較

かんぽの宿中規模旅館
1施設当たり平均売上高4億6000万円7億5000万円
客室数平均47室60室
客単価平均1万1000円1万4000円
正社員の平均給与692万円243万円

「簡易生命保険の加入者福祉施設等の譲渡等に関する会計検査の結果について」をもとに筆者作成

客室数も少なく、客単価も低いという二重の苦しみを抱えています。裏を返せば客室数を少なくしている割に、良質なサービスを提供できていないことになります。

かんぽの宿は、飲食や売店部門を外部委託しており、2007年度にその割合は51%(193億2398万円)を占めていました。その後、徹底的な直営化を進めたことで外部委託費を34%(129億9198万円)まで抑えることに成功しています。

しかし、結果的に人件費が膨らむことに。かんぽの宿の人件費率は直営店で40~50%。中規模旅館の人件費率は28%です。

かんぽの宿は、調査当時から業界水準とはほど遠い高額な給与が支払われていました。同施設の正社員平均給与は692万円。中規模旅館の業界平均が243万円です。その差は2.8倍。かんぽの宿の従業員が、相当優遇されている様子が見てとれます。有価証券報告書によると、日本郵政の平均年収は780万円。かんぽの宿の従業員の給与を、いたずらに業界水準には合わせられない事情が浮かびます。