「こんなにたくさん引き合いが来るとは思っていなかった」 

日本電産<6594>の永守重信会長は、2019年10月24日に行った2020年3月期第2四半期の決算説明会で、電気自動車(EV)などの駆動力を発生させる部品であるトラクションモーターの受注が8-10月の3カ月間で5倍に膨らんだ予想外の事態をこう表現した。

エンブラコの買収に伴う損失200億円を計上 

中国や欧州で、電気自動車やハイブリッド電気自動車、プラグインハイブリッド電気自動車向けの需要が急増しており、永守会長の「(引き合いが)来ているものは全部取る」との方針に沿ってトラクションモーターの製品のほか部品やOEM(相手先ブランド生産)も受け入れた。 

この結果、受注見込みが7月時点の90万台から、10月時点では455万台に増大。さらに長期契約も増えており、これまで2019年から2021年までの3年間だった受注見込みを5年後の2023年まで広げた。 

ただ、こうした急激な受注増に対応するため、納品する製品の開発費や生産増強のための設備投資にかかわる追加費用が発生し、通期で約300億円営業利益が下振れする。 

トラクションモーターは車種ごとに仕様や形状が異なるため1件ごとに開発が必要で、開発から生産立ち上げまでに1案件当たり30億円から35億円の費用がかかる。このため受注件数の増加に伴って開発費も増加するわけで、今回は予想外の受注急増だったため永守会長は「開発費の設定を間違えた」という。 

同時に「今、投資しないとチャンスを失う」とし、一時的に業績が悪化しても投資を続ける考えを示し、投資により「後の売り上げと利益の高さが変わってくる。景色が変わってくる」と将来の成長を見据えた。 

また2020年3月期については、コンプレッサーメーカーのエンブラコの買収に伴い、欧州委員会から命じられたコンプレッサー事業(セコップ社)の売却により、約200億円の当期利益が減少する。 

このため2020年3月期の営業利益を当初見込みより250億円少ない1500億円に、当期利益を同350億円少ない1000億円に下方修正した。売上高は1兆6500億円を据え置いた。この結果、2020年3月期は2019年3月期比11.8%の増収、同15.4%の営業増益、同9.5%の当期減益となる見込み。

文:M&A Online編集部