三菱重工業、デンソー、三井金属などの大企業が注目する薄膜の高品質セラミックスを合成する技術がある。開発したのは京都大学発ベンチャーのFLOSFIA(京都市西京区)で、温度検出器や回路の突入電流防止、減衰器、無線通信機器などでの応用が見込まれている。

FLOSFIAでは2020年から量産を始め、10年後の2030年には120億円の売り上げを目指すという。三菱重工業、デンソー、三井金属は同社に出資し、それぞれの分野での共同開発にも乗り出した。FLOSFIAとはどのような企業なのだろうか。

水から半導体を作るイノベーション

FLOSFIAは、京都大学工学部の中心である桂キャンパス近くに本社や研究開発、製造の拠点を置いており「大学が生み出した新規材料の応用開発に取り組み、誰よりも早く事業化する」ことを事業理念として掲げている。

2011年3月に半導体領域のシリアルアントレプレナー(連続起業家)である人羅俊実氏が創業。2012年に人羅氏が代表取締役に就任し、第三者割当増資による資金調達や大企業との提携を推進。現在は水を用いる独自技術である「ミストドライ®成膜技術」を基礎として、パワーデバイス事業と成膜ソリューション事業を中心に事業展開している。 

同社は2019年1月に、酸化ガリウムで培った半導体技術「ミストドライ®法」を用いて、高品質のセラミックスを合成することに成功したと発表した。この技術は、セラミックスを従来の焼結ではなく、成膜の技術を用いて作製する。これによって表面の凸凹が極めて小さい薄膜の高品質セラミックスの合成が可能となる。

温度検出器や回路の突入電流防止、減衰器、無線通信など、IoT(モノのインターネット) や高速通信、無線充電、電力変換機器などの領域での展開が期待されており、同社では2019年末までにサンプル出荷を始め、2020年に量産を開始。2030年には120億円の売り上げを目指すという。

5年で32億円を調達

FLOSFIAは、2015年から第三者割当増資を繰り返し、2019年7月までに累計で約32億1000万円を調達した。創業期は東京大学エッジキャピタル、京都大学イノベーションキャピタルといった大学関連ベンチャーファンドや、みやこキャピタル、フューチャーベンチャーキャピタルなどの地元京都のベンチャーキャピタルが運用するファンドからの出資が中心だった。

ここ数年は大企業との連携を強化しており、2018年1月に完了した第三者割当では、主な引受先として三菱重工業、デンソー、Mitsui Kinzoku-SBI Material Innovation Fund(三井金属 とSBI インベストメントが共同で設立したプライベートファンド)などの有名企業の名が並ぶ。

三菱重工業とは産業機器に関する共同開発、デンソーとは自動車の電動化に向けた共同開発、三井金属とは材料分野での共同開発を目的として、資本、業務提携を結んでいる。

大企業からの出資を受け入れ、共同開発という新たなステージへ進んだFLOSFIAは、日本のモノづくりにイノベーション(技術革新)を起こすことができるだろうか。

年月FLOSFIAの沿革

2011年3月

ROCAを設立

2012年6月

人羅俊実氏が代表取締役に就任。事業ドメインを半導体領域に変更

2013年9月

京都市ベンチャー企業目利き委員会Aランク企業認定

2013年11月

研究開発拠点を本店(京大桂ベンチャープラザ)に集約

2014年7月

ROCAからFLOSFIAに社名を変更

2015年10月

第三者割当増資により3億1000万円を調達

2015年12月

第三者割当増資により5000万円を調達

2017年3月

第三者割当増資により7億5000万円を調達

2018年1月

第三者割当増資により総額約8億円を調達

2018年11月

内閣府「戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)」(第2期)採択

2019年2月

「Japan Venture Awards 2019」にて「経済産業大臣賞」を受賞

2019年7月

第三者割当増資により総額約9億5000万円を調達

文:M&A Online編集部