凸版印刷<7911>が保育園事業に本腰を入れる。IoT(モノのインターネット)を活用した保育品質の向上に取り組み、将来は保育園児の記録データなどを活用した新事業を開発する。

2017年10月に資本業務提携した保育園向けのITサービスを手がけるユニファ(東京都千代田区)に追加出資し、連携を強化することで計画達成を目指す。

2019年3月にユニファをサポートするため、リクルート<6098>からキッズリー事業(保育士の業務負担軽減と保護者とのコミュニケーションを深めるためのサービス)を承継しており、今後ユニファとの関係がM&Aに発展する可能性もありそうだ。

印刷と保育園には、どのようなつながりがあるのか。

保育園事業は成長分野

凸版印刷とユニファは2017年以降、うつ伏せ寝による窒息などを防ぐ目的で、保育園児の体の向きを自動で記録できるサービス「ルクミー午睡チェック」や、保育士が撮影した保育園児の様子を、保護者がオンライン上で購入できるサービス「ルクミーフォト」を保育園や幼稚園などに売り込んできた。

今回の追加出資を機に、凸版印刷の子会社で保育絵本「キンダーブック」の出版などを手がけるフレーベル館(東京都文京区)をユニファの総代理店とし、全国の保育園の30%にあたる1万施設にこれらユニファのサービスを広める計画。

さらに今後は幼児向けのデジタル教育コンテンツや連絡帳と連動した個人別の教育教材の開発、睡眠状態をリアルタイムで解析可能なシート型生体センサーを用いた乳幼児の見守りサービスの開発などを進める。

また将来はユニファが保有する保育園児の記録データや保護者の情報などを活用した新メディアプラットフォームの開発に取り組み、新たな事業を創出していく。

印刷業界は紙媒体の需要が減少し、競争激化による単価下落など、厳しい経営環境下にある。こうした状況の中、凸版印刷は「健康・ライフサイエンス」「教育・文化交流」「都市空間・モビリティ」「エネルギー・食料資源」の4つを成長領域と定め、新たな収益モデルの確立に取り組んできた。

今回の保育園事業は「健康・ライフサイエンス」の一つの事業となり、これまで凸版印刷とユニファのほかにも子会社のフレーベル館とトッパン・フォームズ<7862>を合わせた4社で事業を拡大してきた。

少子化に伴い、若年層そのものは減少する見込みだが、女性の就労機会の拡大よる保育園児の増加や、保育士不足に伴うITを用いた保育品質の向上などが見込まれ、保育園事業については需要があると判断した。

こうした新規事業への積極投資と、既存事業での技術開発力強化やコスト削減などを推進した結果、業績は堅調で、2020年3月期は売上高が前年度比3.8%増の1兆5200億円、営業利益は同24.6%増の570億円と増収増益を見込む。

480億円でドイツの化粧シートメーカーを買収

凸版印刷は1900年に「エルヘート凸版法」という当時最先端の技術を用いて、証券印刷やパッケージ印刷などの分野の事業を手がける企業として凸版印刷合資会社が創立されたのが始まり。1917年にオフセット印刷合名会社を買収し、2004年には日本たばこ産業から印刷事業関連子会社3社の株式を譲り受けた。

2008年以降に適時開示したM&A案件は8件あり、このうち買収が4件、売却が4件だった。直近は2019年6月にドイツの建装材用化粧シートの大手メーカー・インタープリントの全株式を3億8400万ユーロ(約480億円)で取得し子会社化する発表があった。買収は2019年12月中に完了する予定。

凸版印刷の売上高推移。2020年3月期は見込み
凸版印刷の営業利益推移。2020年3月期は見込み

文:M&A Online編集部