東京証券取引所の「適時開示」ベースで、2018年7月の買収件数(経営権の異動を伴う子会社化・事業取得。ただし、グループ内再編は除く)は前月(28件)のほぼ倍の54件だった。3月決算会社の株主総会が集中する6月は例年、件数が落ち込む傾向があるが、平常月のペースに戻った格好だ。

7月は日本企業がかかわるM&Aで今年3番目の超大型案件があった。産業ガス国内最大手の大陽日酸は同業で世界3位の米プラクスエアから欧州事業を6438億円で買収することを発表した。また、かねて注目されてきた出光興産と昭和シェル石油の経営統合は曲折を経て2019年4月に実現することになった。

大陽日酸は米社の欧州事業を6400億円で取得へ

東証の適時開示は上場企業に義務づけられた「重要な会社情報の開示」のことで、公正な株価形成と投資家保護を目的とする。さまざまな開示情報のうち、ここでは子会社化、事業取得の買収案件についてM&A Online編集部が集計した。

7月に10億円超の買収案件は12件あり、このうち7件を海外M&Aが占めた。大陽日酸による米プラクスエアの欧州事業買収は今年に入って、武田薬品工業のアイルランド製薬大手シャイアー(6.8兆円)、富士写真フイルムホールディングスによる米ゼロックス(6710億円)に続く大型案件。

6400億円超の大型買収を決めた大陽日酸

大陽日酸が取得するのはプラクスエアが展開するドイツ、スペイン、ポルトガルなど9カ国の産業ガス事業と英国、アイルランドなど4カ国の炭酸ガス事業とヘリウム事業。同社は2016年、仏エア・リキードから米国事業の一部を買収して北米市場に参入し、今回、欧州市場にも参入を果たす。事業取得は2018年11月を予定する。

旭化成は自動車内装材メーカーの米セージ・オートモーティブ・インテリアズを約791億円で買収する。成長が見込める自動車分野での事業拡大が狙いだ。

「News Picks」のユーザベース、米経済メディア「Quartz」買収

ユーザベースはオンライン経済メディアの米Quartz Media (ニューヨーク)を82億5000万円を投じて傘下に収めることを発表。ユーザベースは企業情報プラットフォーム「SPEEDA」、ソーシャル経済メディア「News Picks」を運営するが、Quartzの子会社化でグローバル展開を加速する。Quartzは2012年に設立され、北米・世界市場で約2000万人の読者を持つという。

オリックスは米国でローン組成や資産運用を手がける金融会社NXTキャピタルの買収を決めた。買収金額は非公表としているが、1000億円程度とみられている。

話題性では出光興産と昭和シェル石油の経営統合。出光が昭和シェルの発行済み株式のすべてを株式交換で取得し完全子会社化する。株式交換比率は10月に決める予定。

買収金額上位の案件(適時開示ベース)
1大陽日酸、米産業ガス大手、プラクスエアの欧州事業を買収(6438億円)
2旭化成、自動車用内装材メーカーの米セージを買収(791億円)
3オープンハウス、住宅分譲のホーク・ワンを子会社化(200億円)
4東武鉄道、東武ストアをTOBで子会社化(176億円)
5ヤフー、料理動画レシピサービスのdelyを子会社化(93億円)
6ユーザベース、オンライン経済情報メディアの米Quartzを子会社化(82.5億円)
7三菱地所、不動産賃貸のアーバンライフをTOBで子会社化(76億円)
8ベクトル、人事評価支援のあしたのチームを子会社化(32億円)
9香港投資ファンドのロングリーチ、富士通コンポーネントをTOBなどで子会社化(TOB部分は32億円)
10朝日インテック、米医療ベンチャーのRetroVascularを子会社化(28.4億円)
11セプテーニHD、ネット広告の韓国eMFORCEを子会社化(15億~19億円)
12ACCESS、カナダのソフト開発会社Northforge Innovationsを子会社化(11億円)