自社の株を大量に取得しようとする者が現れた場合の対抗措置をあらかじめ定めておくことがあります。こうした買収防衛策は、ともすれば経営者の保身につながる恐れがあるため導入には慎重を期す必要があります。

実際、近年では買収防衛策に対する風当たりは強く、過去に導入した買収防衛策を廃止する企業もあり、導入企業数は減少傾向をたどっています。今回はこうした買収防衛策の現状を概観してみましょう。

買収防衛策を廃止する企業が増えている

2018年5月18日、小田急電鉄<9007>は「当社株式の大規模買付行為に関する対応策」、すなわち買収防衛策を廃止することを発表しました。同社が買収防衛策を導入することを最初に発表した2006年5月18日からちょうど12年にあたる日です。

同社では買収防衛プランの導入以降、3年ごとに株主総会で同プランを継続することにつき承認を得てきましたが、2018 年6月28 日の株主総会では継続をせず、同プランを定めていた定款の規定が削除されました。

実は、こうした動きは他の電鉄会社も同様で、京浜急行<9006>や相鉄ホールディングス<9003>などでも買収防衛策を廃止しています。

買収防衛策を廃止する動きは何も鉄道会社に限ったことではありません。しかし、特に鉄道業界では2005年から2006年にかけて村上世彰氏が率いる投資ファンド(いわゆる村上ファンド)が阪神電気鉄道の株式を買い進め、「物言う株主」として発言力を強めた出来事とも無縁ではありません。

最終的にはライバル関係にあった阪急ホールディングスと阪神電気鉄道が経営統合するまでに至った買収劇を見て、警戒感を強めた関東の私鉄各社が買収防衛策を相次いで導入したという経緯があります。

買収防衛策を導入する際の指針とは

他業界でも2005年2月に堀江貴文氏が率いるライブドアがニッポン放送に買収を仕掛けるという出来事がありました。買収防衛策とそれに対する差し止め請求などが繰り返され、事態は混迷を極めました。

このような動きと平仄を合わせるように、経済産業省と法務省は2005年5月に「企業価値・株主共同の利益の確保又は向上のための買収防衛策に関する指針」を公表しました。

この指針では、買収防衛策としての新株予約権等の発行が不公正なものとして差し止め請求を受けないための条件として(1)企業価値・株主共同の利益の確保・向上の原則、(2)事前開示・株主意思の原則、(3)必要性・相当性確保の原則などを提示しています。

つまり、買収防衛策の導入や発動にしても、それを廃止するにしても、企業価値や株主共同の利益を確保したり、向上させたりする目的をもって行うということが大前提となります。